【11月8日付社説】放射性汚泥/産業施設の除染対策を急げ

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 県内の自動車整備工場にある洗車用の汚水浄化槽にたまった汚泥の一部から、国の指定廃棄物基準(1キロ当たり8000ベクレル超)の7倍となる放射性物質が検出された。

 住宅や公共施設に比べ遅れがちだった産業施設の除染対策は先延ばしできない問題だ。国や県、東京電力は、業界と協力して対策を急がなければならない。

 整備工場の汚泥から検出された高濃度の放射性物質は、福島第1原発事故当初に車に付着した物質とみられる。除染について定める放射性物質汚染対処特措法では、8000ベクレル超の廃棄物は「指定廃棄物」として国が処分に責任を持つとされている。8000ベクレル以下は、業者が処分することになる。

 県内にある整備工場は1700カ所。厳しい排水規制を受けており、洗車で生じた汚水を垂れ流さないよう1トン前後の容量がある浄化槽「油水分離槽」を工場の床下などに設置。汚水をためて有害物質を沈殿させ残りを排水している。

 業界団体が第三者機関に依頼して行ったサンプル検査によると、浄化槽36基の汚泥から、最大で5万7400ベクレルの放射性物質が検出された。また、半数超の19基で国の基準を超えた。国は、汚泥の処分を進める責任があることを認識すべきだ。

 サンプル検査後、満杯の浄化槽から汚水が逆流し、工場が浸水する事例が発生。さらに調査した結果、300工場余りが満杯状態か満杯になる恐れがあり、うち約200工場ではひしゃくを使って汚泥をくみ上げていたことが判明したという。日本自動車販売協会連合会など3団体は「健康被害の恐れがある」と不安を訴えている。

 県内で汚水浄化槽を設置しているのは整備工場だけではない。洗車機を備えるガソリンスタンドをはじめ、タクシーやバスの営業所、重機のリース会社など自動車を扱う幅広い業種が汚水浄化槽を設置している。

 こうした産業施設は町中にありながら、住宅や公共施設よりも除染対策が後回しになっていた。県内の産業界が抱える「洗車汚泥」の実態はどうなっているのか。現状を詳しく把握して対策を講じ、従業員の安全確保とともに、利用客の不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。

 整備工場の汚染汚泥を巡って3団体は、県内全域をカバーする独自の中間処理場新設計画をまとめた。現場保管以外に手段のない国や東電の姿勢にしびれを切らした形だ。原発事故から5年8カ月が過ぎようとしている。国や東電は先送りせず、産業施設の除染対策にも力を入れなければならない。