【11月10日付社説】米新大統領/現実的な選択で政策運営を

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 悪化する格差社会と反グローバル化のうねりは、米大統領選に変動を起こした。

 泡沫(ほうまつ)候補とされ、人種差別、女性蔑視的な言動で政界主流派から忌避されてきたトランプ氏の勝利は、現状に対する米国民の不満や怒りがいかに激しく既存の政治体制を突き上げ「変革」を求めているかを物語る。

 第45代米大統領に就任するトランプ氏は自由世界のリーダーである米国大統領として、国際的な経済・金融体制や民主主義原則、国際規範の徹底、同盟国との関係などに責任を持つ。国際社会に背を向け、日本を含む同盟国を軽視する政策ではなく、現実的な政策を進めてもらいたい。

 敗北した民主党のクリントン氏は四半世紀にわたり、政界の中心にいた。資金力でも組織力でも圧倒的だった。米政治史では大統領選挙を通じて、既存の政治勢力を打ち破る「制度内革命」が起こるが、今回の大統領選挙もそうした性格を持つのではないか。

 6月に英国が国民投票で決めた欧州連合(EU)からの離脱もそうだが、トランプ氏の勝利は富裕層・エリート層に対する中低所得層の反発が先進国で共通する現状を示す。格差社会の改善は先進国共通の急務だ。

 敗北したのは民主党だけではない。共和党も主流が拒否し続けたトランプ氏の大統領就任は党指導部の方針が否定されたことになる。両党は今後、どのようにして格差の問題に向き合うのか、本格的な見直しが必要となる。

 米メディアの出口調査によると高卒以下の白人の3分の2がトランプ氏に投票した。トランプ氏に投票した人々の大半が、貿易は米国の職を奪うと答える保護主義者だ。トランプ氏が票を伸ばした地域を見ると、グローバル化の結果で職が奪われた地域と重なる。選挙の焦点がグローバル化と格差社会への対応だったことが分かる。

 来年1月に大統領に就任するトランプ氏は極めて難しい政権運営を強いられる。僅差の勝利であることやトランプ氏の過激な言動への反発から、民主党が政権に協力するとは期待できない。

 トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)に強く反対し、在日米軍の駐留コストの負担増加を求めるなど、日本は貿易・安全保障の両面で対米関係の全面的な練り直しが必要となる。

 米国の対日政策は一部の専門家が担い、日本政府も彼らをあてにしてきた。米国の草の根の意向が政治を大きく動かすことを肝に銘じ、米国の動向を注視したい。