【11月11日付社説】震災避難いじめ/根底にあるゆがみの解消を

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 氷山の一角ではないのか。いじめ問題としてだけでなく、本県に対する意識の問題として捉え、対策を講じなければならない。

 東京電力福島第1原発事故で、県内から横浜市へ自主避難した中学1年の男子生徒が、転校先の市立小学校で同級生からいじめを受けたとして不登校になっていることが分かった。同市教委の第三者委員会が、いじめがあったと認定する報告書をまとめた。

 報告書によると、生徒は小2だった2011年8月に転校。直後から名前に「菌」をつけて呼ばれたり、蹴られたりするなどのいじめを受け、小3になり一時、不登校になった。小5のときには、同級生から「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、遊興費などを支払ったと証言した。不登校はいまも続く。

 保護者や生徒の訴えを正面から受け止め、組織的な対応ができていれば、不登校になるような事態は避けられたかもしれない。第三者委が市教委や学校の対応を「教育の放棄」と批判したのは当然だ。避難者は全国各地に散らばっている。二度とこのような事態が繰り返されることがないよう、全国の教育関係者は他山の石にしてもらいたい。

 今回の事案は、風評など本県に対する意識の問題が根底にあることを認識する必要がある。原発事故以降の放射線に対する漠然とした不安が、本県に対する不安として残り解消されないままになっているということだ。

 消費者庁が8月に行った消費者意識調査では、食品の放射性物質検査が行われていることを「知らない」と答えた人が3割強あり、食品の放射線によるリスクの受け止めに関して「十分な情報がなくリスクの判断ができない」とした人も3割いた。

 本県の農林水産物の安全確保に向けた取り組みや、空間放射線量がほとんどの地域で他県と大差ないことなど、本県に関する正しい情報が隅々まで伝わっていないことの表れだろう。

 その結果、本県の農林水産物の市場価格は全国平均の価格に比べて落ち込み、震災前の水準に戻っていない。首都圏などから県内への教育旅行も震災前のまだ半分という状況だ。

 震災と原発事故の発生から5年8カ月。改めて確認しておきたいのは原子力政策は国策で進められてきたということだ。震災と原発事故に対する関心が薄れる一方で、ゆがんだ風評だけが定着していくような事態の解消に、国は責任を持ち早急に取り組むべきだ。