【11月17日付社説】国連委16年白書/知見積み重ね不安を安心に

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 東京電力福島第1原発事故による被ばくの影響について、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は「がんの発生率に影響はない」とする従来の見解を踏襲する白書を日本政府に提出した。

 専門の科学者による国連機関が重ねて健康に影響がない―とする見解は、原発事故の発生以来、住民が抱き続ける不安の解消へまた一歩進ませてくれるものだ。今後も知見を積み重ねて、いまある不安を安心へと変えていかなければならない。

 同委員会は2013年に発表した報告書で、「福島事故による被ばくを原因とするがん患者の増加は考えられない」とした。委員会はその後、内容を変更しなければならないような新たな知見がないかどうかを継続調査している。

 今回の調査では、15年末までに公表された放射性物質の放出量や食品への影響、住民の被ばく線量に関する学術論文などを調べた。委員会は報告書の見解を覆すべき知見がなかったと結論付けた。委員会には今後も調査を継続するよう求めたい。

 今回の白書では「原発事故後、本県で見つかっている子どもの甲状腺がんの多くは、被ばくで発症したものだ」とする岡山大教授らの論文に触れている。この論文について委員会は、がんが見つかりやすい超音波検診の影響を「十分に考慮していない」として、重大な異議とは見なさなかった。

 13年の報告書は、チェルノブイリ原発事故と比べて被ばく線量が大幅に低いことや、環境省が行った他県との比較調査でがんの発見率に大きな差がないことなどを踏まえ、「(甲状腺がんなどの相当量の発生は)網羅的な検診の結果で、事故による影響ではないだろう」と指摘。県も甲状腺がんについて「放射線の影響は考えにくい」と判断している。

 委員会が今回の白書で示した見解は、県の判断を重ねて肯定した形となる。一方で、住民の放射線に対する不安は拭い切れない。県は事故当時18歳以下の全県民を対象に行っている甲状腺検査のデータを国内外の専門家に公開するなどして、もっと多くの知見を得ることができるようにすべきだ。

 政府は本年度中に富岡町、川俣町山木屋地区、飯舘村の避難指示を帰還困難区域を除き解除する方針だ。しかし、既に避難指示が解除された市町村の住民帰還はなかなか進まない。背景には、生活インフラの不足と放射線への不安があるとされる。住民不安を取り除くことが復興の「1丁目1番地」であることを銘記したい。