【11月18日付社説】高齢運転者事故/悲劇生まない社会つくろう

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 自分は同じような目に遭わないと言い切れるだろうか。

 東京都立川市の病院で先週末、歩道の男女2人が暴走車に巻き込まれ犠牲になった事故は、80代の女性運転者が危篤の夫を見舞い、帰宅しようとした際に起きた。

 近隣住民によると、女性は立川市の東隣にある国分寺市の自宅で夫と2人暮らし。夫が自宅から5キロ以上離れた病院に入院したのは今年の8月だった。

 「雨の日や乗り継ぎが大変で、車の方が時間もかからず随分楽だ」と話していたという。車だと片道約30分だが、バスと電車では約50分かかる。女性の年齢や乗り継ぎ時間などを考えれば、さらに時間が必要だったかもしれない。

 女性は事故前日、病院で夫の病状を告げられ、そのまま付き添った。一夜明けて自宅に戻ったが、1、2時間で支度を終え、再び病院へ。その数時間後に車は暴走した。警視庁はアクセルとブレーキの踏み間違いが原因とみている。

 年老いた妻が病気の夫の看病を一人で背負い、結果として巻き添えとなった2人の命が奪われた。

 交通の便が良い首都圏でさえ、車の利便性は大きな魅力だ。本県のような地方ではなおさら、生活の足として欠かせない。考えたくないが事故に遭うリスクは誰にでもある。加害者と被害者、どちらにもなり得る可能性があるのだ。

 県警によると、県内の65歳以上の免許保有者は約31万人。10年前に比べて11万人余り増えた。少子高齢化を反映して、全体の免許保有者は微減なのに、高齢ドライバーは増える一方だ。

 政府は高齢者による死亡事故が各地で相次いでいることから、関係閣僚会議を開いた。来年3月には75歳以上の運転者に対する認知機能検査の強化を柱とした改正道交法が施行されるが、安倍晋三首相はさらなる対策を指示した。

 高齢ドライバーによる事故原因は認知症ばかりではない。視力が落ちたり、動作が鈍くなったりしたことが事故につながることもある。同じ高齢者でも衰えには個人差があり、ハンドルを握り続ける理由も、日常の足だったり、生きがいだったりとさまざまだ。

 事故防止には免許の自主返納も一策だが、足の確保が伴わなければなかなか難しい。乗り合いタクシーなどの整備充実を急いだり、近所で助け合うなど考えられる限りの方策を総動員したい。自治体にはコンパクトシティーなど長期的視点での対策も求めたい。

 そして自動車メーカーは自動運転を目標に、安全運転を支援する技術の開発が喫緊の課題となる。