【12月6日付社説】福島大の新学類/「食」と「農」再生へ先導役を

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 「食」と「農」の教育研究の最先端モデルとなるような新学部を目指してもらいたい。

 福島大が2019(平成31)年春の開設を目指す「食農学類」(仮称)の基本構想をまとめた。

 東日本大震災と原発事故後、本県の農業や食が抱える課題を解決し、振興を図るための教育研究が大きな柱となる。本県の課題の多くは、日本農業の課題でもある。本県だけでなく、日本の農業の明日を開くための教育研究と人材育成に全力を挙げてほしい。

 同大によると、食農学類が設置されれば、国立大で「農」という言葉が付く新学部の設置は38年ぶりとなる。これまで本県は農業県でありながら、東北6県では唯一農学系学部がなかった。

 後発の強みとして他大学の長所を生かしながら、独自のカリキュラムに工夫を凝らし、全国の食と農の教育研究を先導するようなポジションを得ることが求められる。それが農業県・福島の再構築とイメージアップにつながる。

 日本の農業は、高齢化や担い手不足、産地間競争の激化、国際化への対応など課題が山積みだ。一方で消費者の安全安心への意識や農産物の安定供給などに対する要求は高まるばかり。さらに本県は震災と原発事故以降、放射性物質や風評への対策など特有の課題を抱えている。

 これら食と農に関する課題を解決するためには、関係する学問分野が領域を超えて、相互にかかわり合いながら教育や研究を進めることが肝心だ。しかし全国各地にある農学部は分野ごとに細分化されているのがほとんどだ。

 福島大の基本構想では、農業生産から、加工・流通、そして小売りや消費までを一体的に捉え、農学や食農教育の対象とすることを打ち出している。各分野を横断させて研究すれば、これまで解けなかった問題の答えが見つかる可能性がある。農学部の新しい在り方として「ふくしまモデル」を構築してほしい。

 農林水産省の「2015年農林業センサス」によれば、本県の農業就業人口(避難区域除く)は7万7435人で、5年前の前回に比べて約3割減少した。本県の農業の再構築と、それを実現するための人材育成は待ったなしの状況にある。

 一方で本県では高校生の約8割が大学進学などで県外に行き、大学生の約6割が県外に就職するなど流出が続く。若者が新学類に入り、県内で食や農に関わる産業に就いてもらえるような魅力づくりが開設準備とともに欠かせない。