【12月8日付社説】カジノ法案/懸念と疑問をぬぐえるのか

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 2年前から廃案、再提出、継続審議という経過をたどり、今国会でも成立は絶望的とみられていた「カジノ法案」が突然息を吹き返し成立へと突っ走る。

 会期延長で時間ができたからと少々のことには目をつぶり、まともな議論を欠いたまま一気に成立させてしまおうというやり方はとても容認できない。

 法案は議員立法で、正式名称は「統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」。カジノを中心とする施設の整備推進をうたう。6時間弱の審議で衆院を通過させ、参院で審議入りした。自民党は延長国会中の成立を目指す。しかし賛否は分かれ、連立与党内の足並みもそろわない。今国会中の採決にこだわらず審議を尽くすべきだ。

 法案が成立すればカジノは刑法が禁じる「賭博」の例外になる。自民は、カジノだけでなく大型会議場やホテル、ショッピング街などが一体となった統合型リゾート施設となり、雇用の創出や観光客の増加など経済効果が見込まれると強調する。安倍晋三首相の「成長戦略」では目玉の位置付けだ。

 しかしカジノ解禁を巡っては、ギャンブル依存症がはびこる、資金洗浄に利用される、治安が悪化する、青少年に悪影響を及ぼす―など、さまざまな副作用が指摘されており、懸念と不安が根強い。

 中でもギャンブル依存症については、厚生労働省の研究班が2014年、その疑いがある人は国内で536万人いるとの推計を示している。この上、カジノまで解禁されれば、依存症の拡大は避けられないだろう。

 いずれも深刻な問題であるのに自民などは十分議論しないまま、対策を政府が成立後に手掛ける実施法案に丸投げしようとしている。解禁を決める前に副作用を直視した具体策を示す必要がある。

 カジノが解禁されれば複数の区域で大規模施設が建設され、雇用創出が期待できるかもしれない。カジノ業者から納付金や入場料の一部が国や自治体に入り、地域振興の起爆剤になるともいわれる。

 しかしその経済効果について、お隣の韓国ではギャンブル産業の売り上げ16.5兆ウォン(約1兆6500億円)に対し、家庭崩壊や労働意欲の低下により社会全体で60兆ウォンの損失が発生したとの試算が11年に公表されている。

 そもそもカジノは客が損をしないと、収益が上がらない。そんな産業を頼りに20年東京五輪・パラリンピックに向けて外国人観光客を呼び込み、経済成長につなげようという発想そのものがどうなのか。出発点の検証も必要だ。