【12月10日付社説】原発事故費用/復興進展へ確実に役立てよ

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 経済産業省が、東京電力福島第1原発事故の廃炉や賠償など対応費用が総額で、これまで想定の11兆円から21兆5千億円に倍増するとの試算を初めて公表した。

 巨額に膨らんだ費用は、第1原発で起きた事故の大きさを改めて浮き彫りにする。事故の当事者である東電と、原子力政策を推進してきた政府は、事故の早期収束と本県の復興に向け、責任の重さを再認識する必要がある。

 費用の内訳は、廃炉が想定していた2兆円から8兆円に増大する。賠償は5兆4千億円から7兆9千億円に増える。除染は2兆5千億円から4兆円に、中間貯蔵施設は1兆1千億円から1兆6千億円にそれぞれ膨らむ。

 膨らんだ要因について経産省は、避難している住民の帰還や移住のための住宅の確保など新たな賠償項目の追加や、中間貯蔵施設の構造の検討状況を踏まえた資金の増加などを挙げている。

 第1原発事故は前例のない災害であり、正確に費用を見通すことが難しいのは分かる。しかし、対応費用が倍増―という試算に驚いた国民は多いだろう。しかも試算は、廃炉について溶け落ちた核燃料を取り出す方法も確定していない中で算出されており、費用はさらに膨らむ可能性もある。

 これらの費用は、廃炉、賠償、除染、中間貯蔵施設など、いずれも本県の再生と復興のために欠かせない。しかし東日本大震災の復興特別税などを通じて国民にも負担を強いている以上、費用は必要最小限でなければならない。費用を検証、精査するとともに、試算の根拠を明らかにすべきだ。

 世耕弘成経産相は記者会見で、これらの費用に関して「状況の変化で増加する可能性もあるが、廃炉技術の革新で低減する可能性もある」と述べた。30~40年かかるとされる廃炉作業の期間を短縮すれば、本県の復興は前倒しされ、費用も低減される。国内外の知見を結集して廃炉技術を開発し費用低減を目指すことが重要だ。

 賠償費用の増額分は、大手電力だけでなく新電力にも負担を求める方針だ。最終的には電気料金に転嫁され、消費者の負担が増えることになる。この仕組みは第1原発だけでなく、他の原発での事故時にも適用される。政府は消費者の理解が得られるよう丁寧に説明を尽くさなければならない。

 政府は、東電の福島関連事業について「実質国有化」を継続する方針だ。本来、原発事故の対策費用は東電が確保すべきものだ。東電にはいっそうの経営改革と合理化に取り組むよう求めたい。