【12月11日付社説】常磐線再開通/浜通り復興加速の追い風に

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 東京から仙台までを結ぶ浜通りの大動脈、JR常磐線が「完全復旧」にまた一歩近づいた。復興を加速させる追い風としたい。

 東日本大震災の津波で被災し、不通となっていた常磐線の相馬(相馬市)―浜吉田(宮城県亘理町)間が、再開通した。

 23キロ余りの同区間は、新地駅が津波で流されるなど大きな被害を受けた。そのため、同区間のうち6割強の線路を内陸側に移設するなど、大規模な工事が行われた。

 JR東日本は来春の運行再開を目標にしていたが、用地交渉がスムーズに進んだため前倒しで再開した。すでに再開通している小高(南相馬市)―相馬間約30キロと合わせ、相馬地方と仙台圏が約5年9カ月ぶりにレールでつながった。

 沿線自治体には、再開通の効果を地域の再生や活性化に十分に生かしていくことが求められる。

 相馬―仙台間45本(上下線計)など、震災前と同程度の運行本数が確保されたことで、特に仙台圏に通勤・通学する住民の利便性が高まった。震災後は相馬―亘理間で代行バスが運行されていたが、相馬―仙台の所要時間は乗り換え時間を含めると震災前の1・5~2倍ほどかかっていた。そのため相馬市では、やむなく仙台圏に引っ越した住民もいたという。

 今年7月に避難指示が解除された南相馬市小高区では、地元に戻った住民が1割程度にとどまっている。各自治体は再開通による利便性の向上を広くアピールし、地元を離れた人の帰還や、新たな定住者の増加につなげてほしい。
 沿線には、相馬野馬追など歴史と文化に育まれた観光素材が多い。鉄路の再開を機に、東北新幹線や仙台空港を利用して仙台圏を訪れた観光客に足を運んでもらい、交流人口の拡大を図りたい。

 それには沿線自治体が連携して観光誘客に取り組むなど、エリア全体の魅力を発信していくことが大切だ。併せて潮干狩りの名所だった松川浦や、海水浴場といった個々の観光スポットの復興も着実に進めていく必要がある。

 常磐線の不通区間は、竜田(楢葉町)―小高間の約37キロだけとなった。JR東日本は今後も段階的に復旧させ、東京五輪の開かれる2020年春までに全線で運行を再開したい考えだ。できる限り前倒しでの再開通を望みたい。

 人や物の流れを支える交通ネットワークの充実は、浜通りの復興に直結する。常磐線と、昨年全線開通した常磐道の相乗効果を生み出す活用策を探り、新しいまちづくりや産業の再生につなげていかなければならない。