【12月17日付社説】日ロ首脳会談/国民理解得て確かな一歩に

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 戦後71年間、刺さったままのとげを抜くのがいかに難しいか。

 安倍晋三首相はプーチン・ロシア大統領との首脳会談で、北方四島での「共同経済活動」の実現に向けた協議の開始で合意し、平和条約締結に向けた重要な一歩になり得るとの認識を声明で強調した。

 しかし領土問題での直接的進展はなかった。首相は記者会見で「解決にはまだまだ困難な道が続く」と述べ、大統領も「すぐに解決できるわけではない」と言明した。

 今回の会談は平和条約締結に向けた信頼醸成のスタートラインの位置付けにとどまった。しかし両首脳が忌憚(きたん)なく意見を交わした意義は小さくあるまい。首相は今回の判断について国民に丁寧に説明するとともに、共同経済活動を着実に実現する責任がある。

 両首脳は北方領土の元島民が墓参する際の手続きの簡素化、8項目の対ロ経済協力プランの促進などでも合意した。元島民は高齢になっている。早期実行を望みたい。

 一方で、共同経済活動の実現には調整の難航が想定される。政府や民間企業が出資し、合弁事業などを行う同様の構想は、1990年代にもロシア側から提起されたが、ロシアの法制度が適用されるならば同国の主権を認めることになるため実現に至らなかった。

 今回の声明では適用する法制度に関して「平和条約に関する両国の立場を害する」ことのない「しかるべき法的基盤」を検討するとしている。しかしロシア側は早速、同国の法制度が適用されると説明している。この課題をどう乗り越えるのか。両首脳の指導力が問われることになる。

 声明には4島の帰属問題に関する記述は盛り込まれなかった。首相は会見で「領土問題について互いに正義を何度主張し合っても解決できない」と述べた。その一方で「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」との基本方針には変わりはないとも述ベたが、過去の法的主張に固執せず「未来志向の発想」で臨むというのが新たなアプローチだとすれば、主権問題の「棚上げ」ではないのか。

 プーチン氏は会見で、平和条約締結後に歯舞、色丹2島を引き渡すとした56年の日ソ共同宣言に触れて、領土問題解決よりも平和条約締結が先行するとの認識を強調した。両国間の隔たりは大きい。

 プーチン氏が会見で示したのは明らかに経済協力を重視する姿勢だった。領土問題は歴史的経緯とその認識、国際情勢と国内政治の事情が絡む。粘り強い外交力と国民世論の理解を得る取り組みが政府には求められる。