【1月1日付社説】新年を迎えて/「福島力」で明日をひらこう

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 2017年が幕を開けた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6度目の正月である。

 今年のスタートは波乱含みだ。20日にはトランプ米次期大統領の新政権が発足する。世界一の経済大国の政策変動は国際経済にどのような影響を及ぼすか。日本経済だけでなく本県への波及も覚悟して復興への道を歩むことになる。

 不透明感が漂う中、7年目を迎える復興を加速度的に進めるために私たちは何をすべきか。県民一人一人の力が問われ、試されることになる。いまこそ心をひとつに「福島力」を発揮するときだ。

 本県が直面する課題は数多く複雑化している。その課題を前に、解決方法を探しあぐね、立ちすくんでしまっている人もいるだろう。どうすれば、より良い答えを見つけることができるのか。

 解決への道筋をつける一つの方法として、脳学者の茂木健一郎さんは「思考の補助線」を引くことを同名の著書で提案する。

 小学校の算数で図形問題を解くときに、補助線を書くことで答えが分かった経験があるだろう。たった1本の線で、無関係と思えていたものが結びつき、全体像が見えるようになる。あの手法だ。

 人、産業、団体、自治体など、同種間でも異種間でも構わない。垣根を越えて協力し合い、知恵を絞って補助線を引けば、今まで考えもつかなかった解決方法を見つけることができるはずだ。

 復興は進んでいる。昨年はJR常磐線が相馬―浜吉田など2区間で運転を再開、残る不通区間は竜田―小高間約37キロとなった。東北中央道も福島市内のわずかな距離だが県内区間で初めて開通した。

 農産物や観光などは風評の固定化が懸念されるが、県産日本酒は全国新酒鑑評会の金賞受賞銘柄数で4年連続で日本一を誇る。観光では石川町母畑温泉の「八幡屋」が、36年連続で総合1位だった石川県の旅館を抑えて「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の王座に就いた。「やればできる」の手本が各地で育まれていることを「福島創生」への糧にしたい。

 厳しい課題にもしっかり対応していかなければならない。県内外で8万人余りが避難生活を続け、「帰還」と「定住」のはざまで葛藤している。汚染土壌を保管する中間貯蔵施設は本体工事が始まったが、溶け落ちた燃料を抱える第1原発の廃炉は前途が険しい。

 課題は復興だけではない。県の推計人口は戦後初めて190万人を割った。人口減少への対応は待ったなしであり、地方創生へ確実に手を打つことが重要だ。しかし、追い風をただ待つだけでは前に進まない。自ら風をとらえ、風にのる。自立の道を一歩ずつ踏みしめてこそ明日への道が開ける。