【1月8日付社説】高野病院/「医療の平等」考える契機に

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 「原発事故以降も、地域医療を守るため一日も休むことなく診療を続けております」

 東京電力福島第1原発事故後、双葉郡の病院で唯一、広野町で診療を続けてきた高野病院の院長高野英男さんが、昨年末に火事で亡くなった。高野さんが生前、病院のホームページにつづった言葉には、地域医療を担う医師としての使命感がにじむ。

 原発事故直後、政府は入院患者の避難を命じた。しかし高野さんは患者の命に危険が及ぶ―としてとどまることを決断した。以来、週に数回は当直を務めるなど、昼夜を分かたず診察を続けた。除染作業員らの救急患者も受け入れ、エックス線の検査も自らこなした。孤軍奮闘は81歳の体には負担が大きかっただろう。しかし、高野さんは最前線に立ち続けた。

 いま高野病院は、ただ一人の常勤医だった高野さんの突然の死で存続の危機にある。

 県は、病院の診療継続に向けた緊急会議で、県が主体となって医師の確保や財政面で支援する方針を示した。約100人の入院患者の命を守り、双葉郡の医療を支えるために県は福島医大などと協力し、早急に具体策を講じていかなければならない。

 当面の診療は、南相馬市立総合病院の医師らが呼び掛け、延べ20~30人の医師が協力する。それでも、今月中の診療を続けるのが精いっぱいだ。

 中長期的に安定して医療を提供するためには、高野さんに代わる常勤医を確保することが必要だ。看護師や放射線技師ら医療スタッフの充実も欠かせない。高野病院の支援については今村雅弘復興相や塩崎恭久厚生労働相も医師確保などの必要な施策を検討する考えを表明している。政府にも積極的な支援を求めたい。

 医師不足は、過疎・中山間地の多い本県において大きな課題だ。高野病院だけの問題ではない。国や県は、高野病院の問題を、地域医療を再構築するための契機として捉えるべきだ。

 日本の医療制度は、全ての人に平等に医療を提供する「患者平等の原則」があり、特定の民間病院を特別扱いしていない。民間病院の公平性を保つため、行政が一病院を支援することは難しい。

 しかし医師が都市部に偏在する現状は、全ての住民が等しく医療を受けているとは言い難い。住民の命を守るために医療過疎をどのように解消していくのか。国は今、本当の「平等」の在り方について考え、地域医療を守り充実させていかなければならない。