【1月12日付社説】高齢者「75歳以上」/多様な生き方支える環境を

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 今回の提言を、超高齢社会を乗り切るために投じられた一石として捉え議論を深めていきたい。

 高齢問題の研究者らでつくっている日本老年学会などが、現在は「65歳以上」とされている「高齢者」の定義を「75歳以上」に見直すよう提言した。

 医療の進歩や生活環境の改善で、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断。活発な社会活動が可能な人が大多数を占める70歳前後の人たちの活躍が明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。

 65~74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求めている。生活が自立できるうちは「支えられる側」でなく「支える側」にという考え方だ。

 1947~49年に生まれた「団塊の世代」は今年から70歳になる。65歳以上の高齢者は全人口の26.7%に達し、国民の4人に1人を超えた。本県をみれば28.7%とさらに高率だ。

 これが2035年に3人に1人に、60年は2.5人に1人になるといわれている。そのころは「団塊ジュニア」の世代を中心に、4人に1人が75歳以上になるという推計もある。

 少子化が進む中で、出生数と15~64歳の労働力人口は減少が続くとみられ、社会全体が老いていくのは避けられそうにない。医療や介護などにかかる社会保障給付費も年々膨らむばかりだ。

 そんな中、65歳以上を高齢者とする定義は世間一般と捉え方にずれができているようだ。厚生労働白書によると、40歳以上の3000人を対象に行った意識調査で「高齢者であると思う年齢」を尋ねたところ「70歳以上」という答えが最も多く41.1%に上った。また「75歳以上」も16%あった。

 60歳以上の2千人を対象にした内閣府の意識調査では、65歳を過ぎても働きたいという人が7割近くを占めている。働きたい人が働く「生涯現役社会」は時代の流れでもあり、定義の見直しは、その実現に向けて、吟味する価値がある提言と言えるだろう。

 一方で、定義の見直しは、65歳以上の人を「支えられる側」として設計している社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも影響を与えることになる。

 学会は、社会保障制度の見直しに関して「国民の幅広い議論が必要だ」と強調している。国民の理解が得られないまま、政府の財政に合わせて利用されるようなことがあってはならない。さまざまな生き方を支える環境づくりを進めるためのきっかけにすべきだ。