【1月15日付社説】Iターン促進/若者に「農」の魅力伝えよう

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 地域の魅力を生かした「農」ある暮らしを提案して、都会からの就農者を増やし、人口減少と過疎化を克服していきたい。

 南会津特産の「南郷トマト」の出荷額が昨年、10億6200万円で過去最高を達成した。出荷量も過去最高の約3400トンに上った。

 南郷トマトは1962年、旧南郷村(現・南会津町)の農家14戸が0.5ヘクタールの畑で作り始めた。甘くて身が引き締まっているのが特徴で、現在では122戸が35ヘクタールで栽培するまでに拡大した。収穫後は8割以上を首都圏に出荷し、取引価格も安定している。本県を代表するブランド野菜の一つだ。

 出荷量が増えた要因には、若手後継者が順調に育っていることが挙げられる。首都圏などから移住する「Iターン」で就農する人が増えており、現在は全生産者のうち約2割がIターン就農者だ。

 特徴的なのは、スキー客が、冬場にスキー場で働く農家と知り合いになり、農業への関心を呼び起こし就農に結び付くというケースだ。30~40代が中心で、夏はトマト栽培、冬はスキー場で働きながらスキーを楽しむ―といった仕事と趣味を両立できる環境に魅力を感じているという。

 農家の高齢化や担い手不足が課題になっている中、地域の観光資源などを呼び水に、若者のIターンを促進するという視点は他の地域でも参考になるはずだ。

 ただ、初心者が農業に取り組むのは容易ではない。南郷トマト生産組合は、就農希望者に地元農家で1年ほど研修してもらい、就農後も継続的に営農指導をするなど生産技術の向上を後押しする。自治体も、住宅の整備や苗購入費の補助などで支援している。

 新規就農者を増やすためには、自治体やJAなど関係機関が連携し、受け入れ態勢を充実させることが大切だ。就農者が安定して収入を得ることができ、地域の一員として活躍できるための環境を整えることが求められる。

 夏秋期のカスミソウ栽培面積で日本一を誇る昭和村でも約50戸のカスミソウ農家のうち約2割がIターン就農者だ。88年から栽培を始めたカスミソウの産地を維持するため、村は新規就農者に農地の賃借料の助成などを行っている。

 同村は新年度、農業系の大学生らを対象に村内の農家でのインターンシップ事業も始める計画だ。

 農業は本県の基幹産業であり、地域経済の基盤でもある。Iターンだけでなく、より多くの就農者を確保し、地域の農業をけん引する農業経営者をつくることが地方創生を前進させることになる。