【1月25日付社説】藤沼湖試験貯水/教訓糧に地域再生へ拍車を

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 地域のシンボル復活を契機に、学んだ教訓をあらためて確認し、地域再生に向けた動きに拍車を掛けていきたい。

 震度6弱の大地震で決壊し、大きな被害を及ぼした須賀川市の農業用ダム「藤沼湖」は復旧が終わり、試験貯水が開始された。3月末までには満水となり、4月下旬から農業用水としての供給が始まる見通しになっている。

 試験貯水は8月中旬ごろまで続く予定だ。県は、堤体やダム設備などの安全性を確認し、今秋にも本格貯水に移行したい考えだ。

 決壊した藤沼湖からは、土砂を含む大量の水が濁流となって下流を襲い、住民ら7人が死亡、幼児1人が行方不明となった。家屋22戸が流失・全壊し、農地90ヘクタールが土砂に覆われた。震災で県内の農業用ダム(ため池)は約750カ所が被災したが、藤沼湖が最大の被害を受けた。その教訓を糧に今後の防災対策に生かしていきたい。

 従来の藤沼湖は、終戦直後の1949年に完成し、土で台形状の堤体を造る工法で建設された。県の検証委員会は決壊の原因について、強い地震の揺れが長く続いたことや、堤体上部に砂が多く使われたことと結論づけた。

 新しい藤沼湖では、堤体の中心部に粘土質の土を盛った上で、周囲を盛り土する地震に強い工法が採用された。堤体を従来よりも地中に深く掘り下げて土台の強度を高めた。

 県は、東日本大震災規模の地震が起きても崩壊しない強度を備えたと説明する。新しい藤沼湖では堤体や水位などを常時観測する計器を設置した。本格貯水開始後は、江花川沿岸土地改良区の職員が常駐して監視に当たる。県は土地改良区や須賀川市と協力し、ダムの安全な維持管理に努めてほしい。

 須賀川市は本年度中の完成を目指し、藤沼湖下流の3地区に防災機能を備えた広場を建設している。避難場所とするためで、防災備蓄倉庫を併設した集会所などを整備する。しかし洪水時の浸水区域を示すハザードマップなどは作成していない。市にはハザードマップなどの作成を急ぎ、住民の防災意識の一層の向上を図っていくことが求められる。

 藤沼湖は、全国ため池100選に選ばれた地域のシンボルだ。周辺はキャンプ場や温泉施設など市内外から多くの観光客が集う憩いの場として利用され、流域の暮らしや市の観光を支えた。キャンプ場などは震災で営業を中断していたが、一昨年に営業を再開した。藤沼湖の復活で、地域のにぎわいと恵みを取り戻したい。