【1月27日付社説】イノシシ対策強化/安心して帰還できる環境に

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 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た地域で深刻化するイノシシなど野生鳥獣の被害防止対策に努め、安心して住むことができる環境を整えていきたい。

 イノシシ対策について、県は避難12市町村や国、専門家チームでつくる対策会議を設立した。

 避難地域では、イノシシが市街地に出没し、民家近くの田畑を掘り起こしたり、窓などを壊して民家に侵入したりしている。イノシシと車の事故も起きており、住民からは早期の対策を求める声が強まっている。住民の生活拠点でのイノシシ対策は喫緊の課題だ。

 これまでは県と市町村、国が連絡会を設け、担当者が情報共有や対策の検討を進めてきた。対策会議は、さらにイノシシ対策を強力に推進していくため新設された。

 対策会議は、専門家チームの科学的な助言などに基づき、効果的にイノシシを捕獲したり、追い払ったりする 実証事業を行い、その成果を12市町村での対策に反映させる方針だ。

 イノシシ対策は、12市町村の将来像を話し合う有識者検討会が2015年7月にまとめた提言でも、広域連携を検討する必要性が指摘されている。

 12市町村では、避難指示が解除された地域への帰還や、避難指示解除の準備が進んでいる。イノシシが自宅近くに出没することが、住民の帰還意欲をそぐ要因の一つになっている。広域連携を強めることで効果的、効率的な対策を推進し、住民の暮らしの安全を確保する必要がある。

 対策会議では、小型無人機「ドローン」を使った実証実験も盛り込んだ。この実験は、ドローンの離着陸場が整備される浪江町で行われる。ドローンの開発企業が今後、現地調査などを行い実験エリアを決め、早ければ3月末にも始める。

 ロボット技術を駆使した対策は住民の負担を減らし、収集されたデータをイノシシの活動範囲の特定に生かすこともできる。開発企業と対策会議が連携して効果的な運用を検証し、確かな技術を確立してもらいたい。

 イノシシの対策が必要なのは避難区域だけではない。被害は県内の広い区域に及んでいる。野生鳥獣による15年度の農作物被害額(避難区域を除く)は1億2846万円に上る。このうちイノシシによる被害が半分を占める。

 県は、ドローンを使った新しい試みをはじめとするイノシシ対策を避難区域の実験で確立し、その対策を他地域の被害防止に役立てることが求められる。