【2月3日付社説】津波と避難/犠牲ゼロへ計画練り上げを

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 いわき市は、津波警報などが発令された際に自動車を利用して避難することを例外的に認める住民の避難計画づくりに着手した。

 津波による犠牲者をなくすために、原則徒歩による避難と、新たに認める方向の自動車利用避難とのルールを明確化し、混乱なく、確実に避難することができるような計画にしなければならない。

 同市は、災害時の避難方法などについて定めた市地域防災計画で、津波警報などが出た場合、交通事故や渋滞を避けるため、原則として歩いて高台に避難するよう定めている。

 しかし東日本大震災では多くの人が車で避難したため渋滞が起き犠牲者増の要因となった一方で、自動車を使って沿岸部から安全な場所に避難できたおかげで命が助かった例もあった。このため同市は、地域の実情によって自動車での避難を認める方向で検討に入った。背景には、国が2012年の中央防災会議で「やむを得ない場合」という条件付きながら自動車避難を認めたこともある。

 自動車による避難が認められる対象は、津波から身を守ることができるような高台から離れている地域や、歩いて避難することが難しい高齢者や障害者が多く住む地域の住民となる見通しだ。

 市は避難経路や交通規制なども併せて決定する方針だ。留意しなければならないのは、普段、市内を走っている車は地域住民だけではないということだ。津波発生時に仕事や観光などで市を訪問している車両をどうするのか。住民だけがルールを守っても渋滞になる可能性が高い。渋滞が発生すれば緊急車両の走行も妨げられる。

 計画づくりに当たっては、どの道路に渋滞が発生しやすいか、避難場所の配置は適切かなどについて詳細にシミュレーションを行うなどして実効性のある計画に練り上げる必要がある。

 同市は8月までに避難計画を作成し、9月には新計画に対応する避難訓練を行う考えだ。

 市の検討部会で助言役を務める東北大災害科学国際研究所助教の杉安和也さんは「避難を円滑に行うためには、自治会などのレベルで、住民が避難の手段を共有しておくことが有効」と指摘している。避難計画を最善のものにするためには住民の意見をよく聞き、地域の実情に合った計画にすることが大切だ。

 自動車利用避難を盛り込んだ避難計画が策定されれば、県内の沿岸部の自治体では初めてとなる。他の自治体のモデルにもなるような計画にしてもらいたい。