【3月1日付社説】避難者の心のケア/危険信号捉え確かな支援を

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 東京電力福島第1原発事故による長期避難でともった避難者の心の危険信号を確実に捉え支援する体制を整えなければならない。

 早稲田大の災害復興医療人類学研究所などが、原発事故で本県から首都圏などに避難した住民を対象にした調査結果を発表した。

 この結果、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の恐れがある人は51.9%と、前年調査に比べて17.2ポイント増え、これまでの減少傾向から増加に転じた。

 調査は双葉、大熊、富岡3町といわき、南相馬両市からの避難者約1万世帯を対象に行った。2月15日現在で827件の返送があり、うち約150件について速報値として集計し、避難者の心理的ストレスの推計結果を公表した。回答者のうち、大熊町や双葉町など帰還困難区域からの避難者が約8割を占めている。

 同研究所は増加について、震災と原発事故に対する社会の関心が薄くなる中、帰還困難区域の避難者が古里に戻れるのかどうか先が見えない焦燥感、避難者全体では生活支援の打ち切り時期などを巡る不安感といったことが背景にあるとみている。避難者の心のケアは喫緊の課題だ。

 県外避難者に対する支援は、基本的に避難先の都道府県や市町村が行っているが、生活上の困りごと相談などが中心だ。

 このため県は、避難者が多い首都圏や新潟、山形、京都などの10都道府県で地元の臨床心理士会などに委託して避難者の心のケアに取り組んでいる。民間団体と協力して生活再建支援拠点も全国25カ所に設けている。

 しかし支援は、交流広場の開催や相談窓口の設置などにとどまり、避難者自らが申し出ない限り支援の手は届かない。

 支援が必要な人ほど、悩みを相談できなかったり、交流広場に出なかったりする傾向がある。県は、受け身の支援の在り方を見直し、こうした避難者に声を掛け、相談にのる体制を築く必要がある。

 本県からの避難者が東京に次ぎ多い埼玉県の支援団体は、県の復興支援員と共に避難者宅を訪ね悩みを聞き、避難先の保健師らによる専門的な支援につなげている。

 政府は、帰還困難区域に特定復興拠点を整備し避難指示を解除する方針だが、拠点が整うのは5年後だ。同区域の住民は避難生活が続く。県は、避難先の自治体や支援団体と県外避難者の情報を共有するネットワークを設けて、避難の長期化に伴い変化する避難者支援の課題を吸い上げ、施策に反映させなければならない。