【3月7日付社説】震災6年 風評との闘い/克服へ「日本一」を増やそう

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 東京電力福島第1原発事故から続く風評を克服するために「日本一」をもっともっと増やしたい。

 「地道に、真面目に、こつこつと続けてきた。いつも同じ気持ちでお客さまをお迎えしている」

 2017年の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合1位になった石川町母畑温泉「八幡屋」の女将(おかみ)、渡辺和子さんのもてなし方に揺るぎはない。

 36年連続で総合1位を誇る石川県の旅館を抑えての「日本一」は全国でも大きな話題になった。それでも渡辺さんは決して浮かれてはいない。「1位になった旅館の社員として、自分たちも向上しなくてはという意識が高まった」と感想も控えめだ。

 震災と原発事故後、県内を訪れる観光客は大きく落ち込んだが、県の調べによれば、15年には震災前の約9割まで回復している。しかし、教育旅行や外国人旅行者は依然、低水準だ。これらを含めて増やしていくためには「もてなし日本一」の県を、県民一丸となって目指すことが大切だ。

 本県で「日本一」と言えば、日本酒を思い浮かべる県民が多いのではないか。県産清酒は、全国新酒鑑評会で4年連続日本一を達成しており、全国の酒蔵が本県を目標にするまでになっている。

 県酒造組合会長の新城猪之吉さんは本紙の取材に「もちろん5年連続を目指すが、目標はもっと先にある」と話している。こだわるのは県産米を使った酒づくりであり、本当の意味での「地酒」をつくることだ。清酒日本一の向こうには酒米生産を通した本県農業の新しいステージも見えてくる。

 もちろん農業生産者も負けてはいない。昨年の県産モモの東南アジア3カ国(タイ、マレーシア、インドネシア)への輸出量は、都道府県別で「日本一」となった。全体の輸出量も震災と原発事故前の水準を超えた。

 本県のモモは、全国トップの山梨県に次ぐ収穫量を誇っており、「果樹王国ふくしま」を支える大黒柱だ。しかし震災前の主要輸出先だった香港や台湾へのモモの輸出は再開されていない。県産農産物は安全性が厳しくチェックされていることを理解してもらって輸出を必ず再開し、県産モモのシェアを広げなければならない。

 原発事故後、県民は風評と懸命に闘い続けている。日本酒、旅館、モモなど、次々に誕生している「日本一」は、血がにじむような努力の成果である。さまざまな分野で競争が激化する中、容易ではないが、一つでも多くの日本一をつくり風評をはね飛ばしたい。