【3月8日付社説】震災6年 廃炉と汚染水/英知集めて険しい山越えよ

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 「ようやく登山口にたどり着いた」。東京電力福島第1原発事故の廃炉作業に携わる東電や国、県の現状認識は一致する。

 しかし、登ろうとしている山の高さはまだ見通せず、登るための道具や方法はそろっていない。険しい山を登り、越えていくために国内外の英知を結集して、一歩一歩、着実に目の前にある課題を解決していかなければならない。

 東電は、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しの大前提である汚染水対策について「出口が見え始めた」と表現する。

 原子炉建屋に流入する地下水を減らすために設けている凍土遮水壁は海側でほぼ全てが凍結し、いまは山側の凍結を進めている。県によると1日当たりの流入量は156トンまで減ったが、目標とする100トンまでは届いていない。

 凍土壁の効果を確かめながら、地下水バイパスや建屋周辺の井戸「サブドレン」からの地下水くみ上げを組み合わせ最大限の成果を受けるようにすることが肝心だ。

 今後、課題になるのは敷地内に保管されている大量の水の扱いだ。汚染水は浄化施設で62種類の放射性物質を取り除いた後、タンクに保管しているが、トリチウム(三重水素)だけは分離できない。

 国内外の原子力施設ではトリチウムを含む水を基準に沿って放出しており、原子力規制委員会の田中俊一委員長も「薄めて海に放出すべき」との考えを示している。国は処理の仕方を検討しているが、地元漁業者らの理解を得るためには丁寧な説明が欠かせない。

 廃炉作業の最難関はデブリの取り出しだ。東電は、デブリの取り出しに向けて、2号機の格納容器内にロボットなどを投入したが、目標とした圧力容器直下までは進めることができなかった。

 しかし、放射線量が極めて高い場所があることや、デブリが飛び散った可能性があることなど、これまで推定するしか方法がなかった原子炉内部の状況を映像や線量計などで確認できたのは大きな前進といえる。

 ただ、今夏にも予定するデブリの取り出し方法の絞り込みに向けての情報はまだまだ足りない。調査を積み重ねて計画の具体化につなげなくてはならない。

 第1原発の敷地内は建屋付近を除いて放射線対策が進んでおり、特別な装備がなくても作業が行えるようになっている。

 この状況をどれくらいの国民が理解しているだろう。根強く残る風評を拭い去るためにも東電や国は第1原発の様子を適時的確に発信していく必要がある。