【3月9日付社説】震災6年 被災地の医療/安心な暮らしへ再構築急げ

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 今春には東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が帰還困難区域を除いて、ほぼ解除される。住民が安心して暮らすことができるよう被災地の医療の再構築を急がなければならない。

 東日本大震災と原発事故前、双葉郡の8町村では病院と診療所、歯科診療所合わせて80施設が診療を行っていた。しかし、いま診療しているのは震災前の約2割に当たる16施設にとどまっている。

 県立大野病院付属ふたば復興診療所(楢葉町)や、富岡町立とみおか診療所、浪江町応急仮設診療所など、自治体が震災後に新しく開設した医療機関もある一方、もともとあった民間の医療機関は、なかなか再開が進んでいない。

 被災地の医療機関の支援に当たっている福島相双復興官民合同チームによると、看護師などスタッフの確保難や、地元にどれほどの住民が戻るのか見通せない中での経営的な不安から再開をためらっている医療機関が多いという。

 医療機関の再開は、住民が帰還する上での大きな判断基準となる。県や合同チームは看護師の育成と求人、中長期的な経営へのアドバイスを強化して、民間機関の再開を後押ししてほしい。

 双葉郡内の病院で唯一、原発事故後も診療を継続してきた広野町の高野病院は、院長が亡くなったため一時常勤医が不在となった。被災地では医師不足が他地域よりも進んでおり、今後も同様のケースが起きないとも限らない。

 双葉郡内では現在、産婦人科や小児科など子育て世代に必要な診療を受けられる医療機関が不足している。人工透析ができる病院もないため、中通りや宮城県内の病院にまで治療に通っている患者もいる。

 県や医師会、福島医大など関係機関には被災地での安定的な医師の確保や、専門的な医療提供に向けた対策を重ねて求めたい。

 郡内では震災後、手術や入院に24時間対応できる2次救急病院もなくなり、いわきや南相馬両市など近隣の病院に頼っている。このため県は、富岡町に2次救急病院「ふたば医療センター(仮称)」を開設する。

 最前線で命を救う拠点であり、来年4月の開設に向けて着実に準備を進めてほしい。

 長期に及ぶ避難生活で体調を崩した住民も多い。住民が健康に暮らしていくためには、身近なかかりつけ医に加え、高度な治療や手術が受けられる医療機関が欠かせない。医療は住民にとって必要な生活基盤の一つであり、最優先で体制の充実を図りたい。