【3月11日付社説】3.11から6年/未来へ確かな一歩踏み出そう

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 相馬市原釜の海辺に立つ市伝承鎮魂祈念館を訪ねた。辺りは静けさに包まれ春のにおいをまとった潮風が頬をなでる。祈念館を背に立てば、目の前には真新しい防潮堤、その向こうの高台には災害市営住宅が並ぶ。震災翌日の紙面にあったあの光景がうそのようだ。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年がたった。地震・津波被災地の復旧はハードからソフトへと移りつつある。一方で、原発事故の避難区域はようやく今春、住民の帰還と地域再生を本格化させようという段階だ。

 県内の復興は、6年の間に地域差が生まれて課題が多様化している。さらに原発事故の風評が根強く残り、県全体の復興を妨げている。しかし、あの日、産声を上げた赤ちゃんは今春、小学1年生になる。足踏みはしていられない。震災前を超えるような復興を遂げるために気持ちを新たにして7年目の一歩を踏み出したい。

 政府は、31日に浪江町、川俣町山木屋地区、飯舘村、4月1日に富岡町の避難指示を解除する。これによって12市町村に出されていた避難指示は帰還困難区域を除きほぼ解除されることになる。

 これらの地域では生活必需品を売る店や診療所などとともに、働く場所の確保が欠かせない。これまでに避難指示が解かれた地域を見れば、戻っているのは高齢者が中心だ。地域の将来をひらくためには、若い世代が安心して子どもを育て、教育できるような環境を最優先で整える必要がある。

 県内の除染で出た汚染土壌を運び込む中間貯蔵施設は、今秋には土壌貯蔵施設の運用が始まる予定だ。しかし用地が取得できたのは約2割にとどまる。貯蔵施設の整備の遅れは、帰還困難区域を除いて最終段階に入っている除染の遅れにつながっている。用地取得と整備を急がなければならない。

 風評被害がなくならない。消費者庁の最新調査では県産品の購入をためらう人は過去最少になったが、農産物は流通段階で風評の固定化が懸念される。風評対策は喫緊の課題であることを政府や県は改めて銘記すべきだ。風評を拭うためにはもちろん、第1原発の廃炉を確実に進めることが肝心だ。

 8万人近くの県民が避難を続けている。県内外の割合は半々だ。古里に戻る人、戻らない人。それぞれの道があるだろう。政府や自治体は人々の意思をくみ取り、生活再建への支援を続けるべきだ。

 苦難を越えて世界的医学者になった野口英世の言葉をいま思い出す。「過去を変えることはできないし、変えようとも思わない。なぜなら人生で変えることができるのは、自分と未来だけだからだ」。福島県の未来の扉を開けるためにみんなで力を合わせよう。