【3月19日付社説】原発避難者訴訟/「人災」と認めた判断は重い

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 東京電力福島第1原発事故で本県から群馬県などに避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の判決が前橋地裁であった。

 地裁は、国と東電が巨大津波を予見でき、原発事故を防ぐことができたにもかかわらず安全対策を怠ったとして過失を認め、両者に賠償を命じた。

 原発事故を巡る裁判で、東電だけでなく国の責任が初めて認められた。全国各地で起こされた同様の訴訟の中で最初の判決だった。

 万一の事態に備えて、常に安全側に立って万全を期すべきだとする裁判所の判断は重い。

 裁判は、政府が2002年に発表した、本県沖などで巨大地震が発生する可能性を示した長期評価を基に、国と東電が津波到来を予測できたかどうかが争点だった。

 判決は、長期評価は地震学者の見解をまとめたものであり、「合理的」と評価した。その上で東電は津波が到来する可能性を知りながら、安全より経済的な合理性を優先させたなどと断じた。

 国に対しては、国は事故前から津波対策に取り組んでおり原発事故を未然に防ぐことが期待されていたが、東電に津波対策を命じなかったとして、原発事故に東電と同等の責任があると結論づけた。

 原発事故が発生すれば、その被害は原発周辺にとどまらず広い範囲に及び、事故の収束は困難な道のりになる。本県では、事故から6年が過ぎた今も、8万人近くの住民が県内外で避難生活を続けている。

 前橋地裁の判決が第1原発事故の影響の大きさを考慮したのは間違いない。国や電力会社は事故の発生を念頭に入れて、原発施設だけでなく住民の安全確保を含めて不断の努力が求められる。

 同様の民事訴訟は少なくとも全国の20地裁・支部で約30件を数え、原告総数は約1万2千人。避難に伴う精神的苦痛や、ふるさとを失ったことに対する慰謝料だったり、事故前のレベルに放射線量を戻す原状回復だったりと請求内容はさまざまだ。東電や国の責任の所在が曖昧なまま時間が過ぎていくことに対する不満ややりきれなさの表れにもみえる。

 福島第1原発事故の予見可能性を巡っては、東京地検が巨大津波を予測できなかったとして、刑事告訴された東電の元会長らを2度不起訴処分にしたが、検察官役の指定弁護士が検察審査会の議決に基づいて業務上過失致死傷罪で強制起訴している。

 今回の前橋地裁判決がこれらの訴訟に影響を与えるのかどうか。注視していかなければならない。