【3月26日付社説】残業時間規制/「過労死ゼロ」への出発点に

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 労使合意があれば青天井で働ける現状を改め労働基準法に上限が初めて明記されることになった。長時間労働是正への第一歩と捉え改善への努力を続けたい。

 働き方改革の柱である残業時間の上限規制について、繁忙期の上限を「月100時間未満」とする案を、政労使がまとめた。

 1カ月の上限時間について、連合は100時間「未満」を、経団連は「以下」を主張して対立していたが、安倍晋三首相が「未満」とするよう要請し決着した。政府は働き方改革の実行計画を近くまとめ労基法改正に着手する。

 残業規制案によると、厚生労働省が目安としている月45時間、年360時間を残業時間の原則的な上限とする。繁忙期に限り、1カ月100時間未満、2~6カ月なら月平均80時間まで認める。1年間の上限は720時間(月平均60時間)とし、5年後に内容を見直すことも盛り込んだ。

 日本で長時間労働の抑制が進まない大きな原因は、労基法が残業時間に緩いことだといわれてきた。労基法は残業時間の上限を定めておらず、繁忙期などには労使が協定を結べば、特例として年6カ月まで残業時間をほぼ無制限に設定できる。

 その意味で、残業時間の上限が労基法に明記され罰則規定が設けられるのは前進である。問題は繁忙期の上限が長すぎることだ。厚労省は労災認定の目安を1カ月100時間超、2~6カ月で月平均80時間超としており、繁忙期の上限はこの「過労死ライン」に沿う形で決着した。過労死の遺族などからは強い反発が出ている。

 ただし、連合と経団連が、残業時間の特例を認める場合でも原則的な上限の月45時間に近づけることで合意していることは重要だ。まず労使がこの合意を守るよう努力しなければならない。その上で、5年後にこだわらず、繁忙期の上限時間を中心に、残業規制の内容を継続的に見直していくことを、政府と労使に求めたい。

 日本では労働者が働いた時間を実際より少なく記録するサービス残業が横行している。こうした不法行為を根絶しなければ、残業規制の実効性は期待できない。過重労働の是正に向けては指導監督体制の強化も急務である。

 終業から始業まで一定期間の休息を義務付ける勤務間インターバル制度の導入を企業の努力義務とすることでも合意した。いずれも重要な課題であり、早期の実現に努めてほしい。働き方改革を「名ばかり」にしないために、労使の覚悟が問われている。