【3月29日付社説】脳疾患拠点開設/「ワースト」返上への契機に

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 脳疾患で亡くなる県民を一人でも多く救うための拠点として機能を十分に発揮することが重要だ。

 福島医大病院は5月1日に脳疾患センターを開設する。脳疾患の治療や研究体制を強化するとともに、認知症の早期発見に取り組む体制を整える。

 厚生労働省の2010年調査によると、本県の脳梗塞の死亡率は女性が全国ワースト1位、男性が同5位であり、脳疾患対策は急務だ。拠点整備を全国最悪の水準を抜け出すための契機にしなければならない。

 センターは、同病院に現在ある神経内科と脳神経外科の外来と、心身医療科にある認知症分野の外来とを統合し、脳疾患の診療体制を一元化する。また会津中央病院(会津若松市)と共同で、脳血管障害に対する脂肪幹細胞を利用した再生医療の研究に取り組む。

 脳疾患は命を失う危険があるだけでなく、体にまひが残り、その後の生活に影響を及ぼす恐れがある。県民が健康な暮らしを続けることができるよう、それぞれの研究成果を生かして患者に最善の治療を提供しなければならない。

 センターは、脳疾患の治療や研究に加え、県内の病院と連携して脳梗塞などの専門知識を持つ専門医の育成に力を入れる考えだ。

 県内の専門医は、現在10人程度にとどまっている。専門医になるには指導医に付いて研修する必要があるが、県内に指導医がいなかったのが要因だ。このためセンターでは、指導医を雇用して医大病院で研修できるようにする。

 脳梗塞は発症してから数時間以内に、投薬治療や血栓除去の手術を行う必要がある。このため患者がより近くの病院で治療を受けることができる態勢を整えることが肝心だ。県内の病院は、多くの医師が専門医の資格を取得できるようセンターを活用してほしい。

 脳梗塞は高血圧症などの生活習慣病が引き金になりやすい。病気を防ぐためには、生活を改善することも必要だ。県民の多くは生活の移動手段が車中心であり、運動不足になりがちだ。また塩分の多い食事をする傾向がある。震災と原発事故後は、一時的に運動が制限されたり、加工済みの食品を食べることが多くなったりして、生活習慣病が増える傾向にある。

 しかし、生活習慣病を予防するために特定健診を受診している県民は半分に満たず、受診率は全国平均に比べて低い。センターは県や市町村などと連携を強め、県民が健康増進に向けて、生活改善と自己管理に取り組みやすい環境の充実を図ってもらいたい。