【4月7日付社説】農作業中の事故/一声掛け合いゼロ目指そう

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 農作業の季節がやってきた。しかし県内では農作業中の死亡事故に歯止めがかからない。事故ゼロへ官民の取り組みを強めたい。

 県によると、2006年から15年までの10年間に県内で発生した農作業中の死亡事故件数は計153件で、全国平均の約2倍の水準となっている。

 このため県は本年度から3年間を重点期間として位置付け、緊急対策に取り組む。農作業安全モデル地区の設置をはじめ、自治体やJAなどと連携した啓発活動、地域ぐるみでの声掛け運動など活動を充実強化する。

 県はこれまでも死亡事故が多発するたびに警報を出して、JAなど関係機関とともに対策を講じてきたが有効な手を打てていない。

 農作業中の事故で死亡した人の約9割は65歳以上の高齢者で、高齢化が進む本県農業の現状を浮き彫りにしている。加えて近年は、繁忙期に農作業を一時的に手伝う家族らが死亡するケースもある。緊急対策では対象拡大などにも取り組むが、従来の対策で不十分なところを徹底的に検証し、対策の実効性を上げることが重要だ。

 10年間の累計数は、県内建設業の労災死亡事故110件(福島労働局集計)より43件多い。農作業中の死亡事故の比率が、他産業に比べて高いことは農林水産省の調査でも明らかだ。

 要因として農業者の多くが個人経営で、責任を問われる法人は少ないため、他産業より安全意識が高まらないことが指摘される。事故を減らすためには、行政や関係機関の対策とともに、農業者も安全意識の向上が求められる。

 事故原因をみると、トラクターなど農機の転落・転倒によるものが半数以上を占める。横転した場合に備えて安全フレームを取り付け、運転席から投げ出されないようシートベルトをしっかり締めることが肝心だ。

 年齢を重ねれば農作業の熟練度は上がるが、瞬発力などの運動能力は衰えるのが一般的だ。慣れや体力を過信せずに、機械や周辺の状況に気を配りながら慎重な運転と作業を心掛けてほしい。

 死亡事故の発生は例年、4月から6月までの春の作業期と、10月の収穫期に集中している。今年も4月1日から「春の農作業安全確認運動」がスタートした。

 運動のテーマは「一人一人の安全意識と周囲からの『声かけ』から始まる農作業の事故防止」。機械化が進み、一人で作業をすることも多くなった。一声掛け合う環境と習慣をつくり、地域ぐるみで事故ゼロを目指したい。