【5月18日付社説】「遠隔診療導入/地域医療支える強い味方に

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 地域医療が抱えるさまざまな課題を解決するためには急速に進歩する情報通信技術(ICT)を効果的に活用することが大切だ。

 南相馬市立小高病院は、小高区に帰還した住民を対象にした遠隔診療(オンライン診療)システムの運用をきょうから始める。

 自宅にいる患者がタブレット端末の画像を通して病院の医師に健康状態などを報告し、薬の処方もしてもらう。当面は看護師や事務職員が患者宅に出向き、端末操作の補助をする。同病院は、医師が病院から離れることができず患者宅まで往診に行けない場合や、来院する必要がない患者の診断の際に遠隔診療を行う方針だ。

 小高区は昨年7月、東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された。先月末までに地元に戻った住民は2割弱で、うち半数以上が65歳以上の高齢者だ。健康面に不安を抱える住民も多いが、同区内に二つある病院のうち再開したのは小高病院のみで、診療所は八つのうち2施設の再開にとどまっている。先進的な遠隔診療の導入は住民の安心感を高めることが期待できる。きめ細かい健康指導や疾病管理につなげてほしい。

 遠隔診療は政府も被災地の医療復興に向けた手だての一つとして注目している。安倍晋三首相は、小高病院の遠隔診療システム導入について「ふるさと再生の力になる」と述べている。政府は、地域医療の先駆的なモデルになるよう支援していかなければならない。

 遠隔診療が役立つのは被災地だけではない。過疎地など医師不足が深刻な地域でも医療格差の是正に効果があるだろう。患者の来院の手間を省き、細かい健康管理も行えるため生活習慣病の重症化などを防ぐことができ、医療費の抑制につながるという利点もある。

 ただ遠隔診療は、診療報酬の低さや、機器類など初期投資の負担がネックとなり、導入する医療機関はまだ少ない。政府は2018年度に予定する診療報酬の改定で、遠隔診療の診療報酬を引き上げる方針を示している。医療関係団体などとも話し合って課題を洗い出し、遠隔診療の普及を後押ししていくことが重要だ。

 ICTは日進月歩で進化している。遠隔診療も画像を通して会話するだけではなく、最近は心電図や呼吸状態などを計測できる機器も開発されている。

 本県は高齢化や過疎化が進み、医師不足も喫緊の課題となっている。県や市町村は、住民がより良い医療サービスを受けることができるよう、新しい技術を生かした施策の充実を図ってほしい。