【6月11日付社説】作業員被ばく事故/ずさんな安全管理を改めよ

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 なぜ事故やトラブルが繰り返されるのか。再々指摘されてきた安全意識の欠如がまたも裏付けられたと言わざるを得ない。

 茨城県の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで、作業員5人に放射性物質が付着し、機構の測定ではこのうち1人から2万2千ベクレルの放射性物質が検出される国内で前例のない内部被ばく事故が起きた。

 機構によると、作業員が放射性物質の貯蔵容器を点検中、容器内からプルトニウムとウランなどが飛散した。

 急性の放射線障害が現れる被ばく量ではないとの見方が強いが、プルトニウムは長期間、アルファ線を出し、臓器や組織に障害を与える恐れがある。肺に沈着すれば、発がんリスクを高めることが懸念される。作業員には長期にわたるきめ細かい対応が求められる。

 機構の説明では、容器を開けた際に放射性物質の入ったビニール袋が破裂した。プルトニウムが出す放射線の影響でガスが発生し、圧力が上昇した可能性がある。

 機構は「想定外」の事案としているが、原子力関連施設では、放射性物質の漏えいや被ばくなどといった最悪の事態を常に想定すべきであり、それは東京電力福島第1原発事故から学んだ最大の教訓だったはずだ。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は「(機構は)プルトニウムに慣れ過ぎてしまったのではないか」と指摘している。放射性物質を扱う際に緊張感を維持するのは基本であり、安全意識を再点検し、作業時の慣れや緩みを排除する指導を徹底すべきだ。

 貯蔵容器が封印されたままで26年間一度も点検されていないことも問題だ。機構は「点検の期間や頻度を定めた要領自体がなかった」と釈明する。余りにも管理がずさんすぎる。放射性物質の貯蔵体制も早急に改善すべきだ。

 機構を巡っては安全管理の不備が再三指摘されている。2012年に高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)で点検漏れが発覚し、13年には加速器実験施設(茨城県)で内部被ばく事故を起こした。

 機構は一連の事故を踏まえて改革計画を作り、安全最優先の組織づくりに取り組んでいるというが、今回の事故は改革が進んでいないことの証左と言える。

 機構は、日本の原子力技術を支える公的機関であり、福島第1原発の廃炉を進めるための技術開発も担っている。事故原因を究明して再発防止策を講じるとともに、安全文化の醸成に全力で取り組まなければならない。