【6月30日付社説】韓国大統領発言/誤認を定着させてはならぬ

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 一国のトップが発する言葉は重い。発言が独り歩きして、誤った認識が広く定着するようなことは避けなければならない。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が東京電力福島第1原発事故の死者数を「計1368人」と発言したことについて、韓国大統領府関係者が「誤りがあった」と述べた。発言に事実誤認があるとする日本政府の申し入れに韓国側が誤りを認めた形だ。政府は今後もこうしたケースには、より迅速に対応し、正しい理解を促さなければならない。

 文氏は今月19日、脱原発を宣言する演説の中で第1原発事故に言及し「福島原発事故により2016年3月現在、計1368人が死亡した。放射能の影響による死者やがん患者の数は把握すら不可能な状況だ」と発言した。

 大統領府関係者によると、文氏が述べた数字は日本の一部メディアが16年3月に「原発関連死」として独自に集計、報道した数字を引用、「関連死者数と表現すべきところ、『関連』の文言が抜け落ちた」という。朝鮮日報は産業通商資源省が文氏に誤って報告したと伝えている。あぜんとするばかりだ。

 しかし、問題なのは数字だけではない。「放射能の影響による死者やがん患者の数は把握すら不可能な状況だ」という発言も当たらない。

 第1原発事故の放射線により直接亡くなった人はおらず、世界保健機関(WHO)などは「放射線による健康被害は確認される可能性は少ない」との見解を示している。県民健康調査も続けている。発言を訂正すべきだ。

 今回、日本政府が文氏の発言を受けて「正しい理解に基づかず、極めて残念だ」と韓国側に申し入れたのは当然だ。

 一方、県は文氏の発言について「外交ルートで対応する内容だ」として復興庁を通して政府の対応を確認するだけにとどまった。一義的にはその通りかもしれないが、速やかな対応を政府に求めるなどできる限りの努力をすべきだ。でなければ本県の深意は韓国にも日本政府にも伝わらない。

 韓国は県産品の輸入規制を続けており風評も収まっていない。今年2月には韓国の格安航空会社が福島発チャーター便の運航を拒否、日本の航空会社に切り替えざるを得ない事案が起きている。

 韓国は最も近い外国であり、震災以前は福島空港から定期便が就航していた。政府や県は手段を尽くして、本県に対する誤解や偏見を解き、風評払拭(ふっしょく)に努めなければ、より遠くの国々での理解も深まらないことを銘記すべきだ。