【8月11日付社説】民俗芸能/ふるさとの宝守り次世代に

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 ふるさとの「宝」である民俗芸能を守り、次世代へと引き継いでいかなければならない。

 東日本大震災と原発事故の影響で存続の危機にある民俗芸能が、一堂に会する「ふるさとの祭り」が、今年は11月25、26の両日、浪江町で開かれることになった。

 民俗芸能は、地域の風土や暮らしの中で生まれ、地域の人々によって育まれてきた民間の芸能。祭りや寺社の行事という形で生活や信仰などと深く結びついてきた。

 民俗芸能を継承することで、先人との思いを共有し、住民同士、さらには地域と住民の絆が保たれ、深まるはずだ。

 開催地となる浪江町は原発事故後、全町に避難指示が出されていたが、3月31日に帰還困難区域を除いて解除された。「ふるさとの祭り」は今回で5回目となるが、全域に避難指示が出た自治体では初めての開催となる。

 今回は震災前まで浪江町の恒例行事だった「十日市」をもとにした「復興なみえ町十日市祭」も同時開催されることになっている。

 出演団体は、浪江町をはじめ、浜通りを中心に20団体程度を予定している。より多くの団体が参加して大会を盛り上げるとともに、活動継続の糧にしてほしい。

 NPO法人「民俗芸能を継承するふくしまの会」によると、民俗芸能の継承に取り組む浜通りの団体は、津波で衣装が流されたり、避難のため活動が困難になったりして、約350団体のうち約6割が存続の危機にあるという。

 震災後、活動を再開した団体は約60団体で、その多くは、県内外に避難している住民たちが、互いに避難先を行き来して、踊りなどの練習を続けているという。

 それらの団体が活動の励みにしているのが「ふるさとの祭り」だ。2012年に郡山市と会津若松市で開かれた「地域伝統芸能全国大会」を県などが引き継ぐ格好で、地元での発表が難しい団体などに機会を提供している。

 避難の長期化によって新しい課題も生まれている。全町避難が続く大熊町では「熊川稚児鹿舞」を継承する保存会が避難先で14年から活動を再開しているが、踊り手となる子どもたちが成長するに従って、新たな踊り手の確保が課題となっている。

 県はふくしまの会に委託して、民俗芸能の保存団体から活動の状況などについて聞き取り調査を行っている。活動を中断する期間が長引けば、長引くほど継承はより難しくなる。県や市町村は各団体が抱える課題にしっかり耳を傾け活動を支えることが求められる。