【9月5日付社説】第1原発工程表/着実な廃炉へ英知を集めよ

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 本県の復興は、東京電力福島第1原発の廃炉を完了してこそなすことができることをあらためて認識しなければならない。

 政府が、第1原発の廃炉・汚染水対策チームの会合を開き、廃炉に向けた工程表「中長期ロードマップ」の改定案を示した。

 改定案では、1~3号機の溶融核燃料(デブリ)の取り出し時期について「2021年内に開始することを目指す」と表記し、現行工程表の「21年内に取り出しを開始する」から表現を後退させた。

 経済産業省資源エネルギー庁の木野正登廃炉・汚染水対策官は県庁での記者会見で、「21年の取り出しは可能だとは考えているが、(工程表決定に向けた)精査が済んでいないので『目指す』という文言を入れた。遅れることが前提ではない」と述べた。しかし精査の結果次第では、取り出し開始が遅れる可能性も否定しなかった。

 政府と東電は、デブリの取り出しに向けて、1~3号機で原子炉格納容器の内部調査を進めてきた。これまでに3号機でデブリとみられる物質が見つかったものの、1、2号機では直接確認されておらず、格納容器内の全体像は把握できていないのが現実だ。

 改定案は、こうした状況などを踏まえての表記と受け取れる。確かに廃炉に向けた作業は安全第一であり拙速であってはならないのは当然だ。しかし取り出し開始の遅れは、廃炉が完了する時期の遅れにつながる可能性を生む。

 改定案では、事故後30~40年で廃炉を完了するとした全体の枠組みは維持しているが、遅れが重なるようなことが続けば、全体の枠組みも崩れかねない。本県の復興を着実に進めるためには工程表の維持と達成が重要だ。

 原発事故後、廃炉技術の研究と開発は日進月歩だ。国内外の英知を結集すれば、さらに加速できるはずだ。現行の工程表でデブリ取り出し開始としてきた21年までまだおよそ4年ある。工程表の正式決定に向けては、研究開発の最新動向を踏まえながら、どうすれば工程を維持できるのかの視点を持ち、精査を進めてもらいたい。

 改定案では、デブリ取り出しについて、原子炉格納容器を水で満たさない「気中工法」を軸に、格納容器底部の横側からの取り出しを先行。取り出しは小規模な作業から進め、作業内容を柔軟に見直しながら、段階的に規模を拡大することなども盛り込んだ。

 新しい工程表は今月中に正式決定する予定だ。政府は改定の理由や内容について県民に丁寧に説明し理解を得るよう努めてほしい。