【9月20日付社説】おたふくかぜ/軽い病気と侮ってはならぬ

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 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を「子どもの軽い病気」などと侮ってはいなかっただろうか。

 おたふくかぜの合併症で難聴になった人が、2015、16年の2年間で少なくとも336人いることが、日本耳鼻咽喉科学会による初の全国調査で分かった。

 数年おきに大きな流行を繰り返すおたふくかぜだが、予防接種を受けるかどうかについて現在は任意となっている。いったん難聴になると有効な治療法はない。おたふくかぜの予防とリスクについて国や自治体、医療関係者、国民、県民が考えるきっかけにしたい。

 調査によると、難聴になったと診断された336人のうち、詳細が判明した314人の約8割に当たる261人が、日常生活に支障を来す高度難聴または重度難聴だった。両耳とも難聴となった14人のうち11人は、補聴器を使ったり人工内耳を埋め込んだりした。

 全体の約半数に当たる154人が5~10歳で、子どもが難聴になるケースが多かった。一方で子育て世代の30代も目立った。大人も十分注意しなければならない。

 おたふくかぜはムンプスウイルスが原因で、耳の下の腫れや発熱が起こる。せきやくしゃみのしぶきを吸い込んだり、手に付いたウイルスが口に入ったりして広がる。まずはこまめに手を洗い、タオルを共用しないことが肝心だ。

 おたふくかぜのワクチンは、1989~93年の間は、はしか、風疹との混合ワクチンとして、原則無料の定期接種だった。しかし、発熱、頭痛、嘔吐(おうと)などが主症状の無菌性髄膜炎の副反応が問題となり、中止された。

 その後は、単独の任意接種となり、現在の接種率は3~4割程度にとどまっている。このため、定期接種が広く導入されている他の先進国でほぼなくなった流行が、日本では繰り返し起きている。

 学会は、予防接種をすれば難聴になるのを防ぐことができた可能性があるとして、定期接種の対象にするよう国に求める。世界保健機関(WHO)も定期接種化を推奨している。副反応を考慮した定期接種化の検討と、安全で効果の高いワクチンの開発が急がれる。

 任意となっているおたふくかぜの予防接種だが、費用を助成している自治体が県内では10市町村ほどある。2011年から助成している郡山市の場合、昨年は1歳児の約8割が受けた。「これまで副反応の報告はない」という。子どもたちが健康に育つために助成の輪を広げたい。同時に保護者に予防接種の長所と短所を丁寧に説明し、理解してもらうことが重要だ。