【9月26日付社説】首相解散表明/なぜいまか説得力に乏しい

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 いま、なぜ解散するのか。「大義」は何か―。多くの国民の疑問は解けないままだろう。

 安倍晋三首相が記者会見し、28日召集の臨時国会冒頭に衆院を解散すると正式表明した。第48回の衆院選は「10月10日公示―22日投開票」の日程で実施される。

 首相は会見で「少子高齢化や北朝鮮情勢に対応するため、政権基盤を固めるよう国民の信を問いたい」と強調、「国難突破解散」だと主張した。しかし、衆院議員の任期が1年2カ月以上残す現時点で、あえて解散・総選挙を行う説明が尽くされたとは思えない。国民が納得できるよう、より丁寧な説明が求められる。

 首相は8月の内閣改造で看板に掲げた「人づくり改革」を強調。2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げによる税収の使途を「全世代型社会保障」へと転換し、子育て支援や教育無償化に振り向けることを表明した。

 首相は、消費税の使途変更に関して「国民との約束を変更し、重い決断をする以上、国民に信を問わなければならない」と指摘。20年度の基礎的財政収支を黒字化する財政健全目標の達成は「困難になる」と認めた。

 一方で首相は「財政再建の旗は降ろさない。黒字化の目標自体は堅持する」とも述べた。景気は緩やかに回復してはいるが、増税可能な経済状況をどのように実現していくのか。今後の財政運営について明確なビジョンと道筋を示す必要がある。

 解散の背景には、内閣支持率が回復基調にあり、他党の選挙準備が整わないとの情勢認識がある。

 実際、野党の混迷は目を覆う。小池百合子東京都知事は自らが代表になって新党「希望の党」を立ち上げると表明した。民進党などから新党合流を目指す離党者が相次いでいる。

 しかし自らの議席維持を最優先に政党を移る政治家の行動は有権者の信頼を失うだけだ。理念と政策で国民に明確な選択肢を示すよう各政党と候補者に求めたい。

 首相は衆院選の勝敗ラインを自民、公明両党で過半数(233議席)とし、下回った場合は「下野し辞任する」と述べた。

 民進党など野党は森友、加計(かけ)両学園の「疑惑隠し解散」と批判している。しかし衆院選は政権選択の選挙だ。この問題だけを議論していては大局を見逃す。野党第1党の民進党は現実的な政策を示して論戦を戦わせるべきだ。

 北朝鮮が緊迫化する中での選挙戦だ。「政治空白」の影響は最小限にとどめなければならない。