【10月1日付社説】水位計設定ミス/危機感共有し抜本策を打て

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 繰り返されるミスやトラブルをなくすためには何が必要で、何をなすべきなのか。危機感を持って抜本的な対策を講じるべきだ。

 東京電力が福島第1原発1~4号機周辺にある地下水くみ上げ用の井戸内の水位を監視している水位計の設定を誤り、原子炉建屋などにたまった高濃度汚染水が今年4月から外部漏えいの恐れがある状況だったことが分かった。

 問題の井戸は6本。このうち1本の水位は建屋地下にたまる汚染水よりも低くなっていたことが分かった。第1原発では汚染水の漏えいを防ぐため、井戸の水位が汚染水より高くなるよう調整している。この井戸では5月に8回、地下水と汚染水の水位が逆転していた。東電は汚染水が漏れ出した可能性を否定できないとしている。

 汚染水対策の基本には外部に「漏らさない」がある。それなのに、人為的なミスで汚染水が漏えいする危険性が約半年にわたって放置されてきたのは看過できない。東電は全ての作業を総点検し、わずかなミスも見過ごさないチェック体制を構築しなければならない。

 東電によると、水位計の設定ミスがあった6本の井戸は4月中旬から8月上旬にかけて新設された。水位計は、東日本大震災後の地盤沈下を考慮し新しい基準を使うべきところを、古い基準で設定したため、計測値が実際よりも約70センチ高くなっていたという。

 東電は、井戸の水位を水位計の数値で管理しているが、稼働後に実測値と照らし合わせるなどの動作確認を行っていなかった。実測値測定は水位計の点検に合わせて2年に1度の予定だったため、ミスが発覚しなければ2年間放置される可能性もあった。

 設定ミスに気付くことができなかった背景には、基準を決める部署と工事を行う部署の情報共有が不足していたことがある。東電は6月から新体制に移行し、組織の縦割りなどを打ち破るとしていたが、危機管理や安全意識の面での改善が進んだとは言い難い。

 井戸の水位逆転は8月にも別の井戸であったばかりだ。原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元理事長は「決められたルールで的確に作業を行うのは原子力安全の基本だが、東電はそれができていない」と指摘する。東電は、指摘を真摯(しんし)に受け止め、再発防止と危機管理に努めなければならない。

 第1原発の汚染水対策や廃炉作業でのトラブルやミスは、古里への帰還や漁業の再生に影響を与え、風評を拡大する可能性があることを東電はあらためて肝に銘じなければならない。