【10月3日付社説】教育旅行/福島の今を伝える好循環を

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 より多くの子どもたちに本県のいまを見てもらうことが復興を進めるための大きな力となる。

 修学旅行やスポーツ合宿など教育旅行で、県外から本県を訪れた小学生~大学生は2016年度、32万9909人となり、東日本大震災と原発事故後初めて30万人を超えた。県がまとめた。

 12年度から5年連続での増加だが、原発事故の影響がない09年度に比べれば約6割の水準にとどまる。教育旅行の誘致に向けていっそう力を入れなければならない。

 本県は、首都圏から交通の便が良いことなどから、16年度に訪れた子どもたちも東京都の7万2749人をトップに、埼玉、茨城、千葉県の順に多い。

 ただ09年度比でみると、同じ首都圏でも本県に隣接する茨城、栃木両県が8割前後まで回復しているのに対して、東京都や千葉、神奈川両県などは5割台までしか回復していないのが実情だ。

 このほか東海・中部や近畿地方でも5割台、四国地方は3割強という回復率だ。

 5年連続の増加は、本県の復興が着実に進んでいる証しであり、官民を挙げた誘致活動の成果ともいえる。ただ、地域によってまだら模様を描く回復状況をみると、本県の現状に対する理解が十分に進んでいるとは言い難い。

 旅行関係者によると、本県への教育旅行の実施にあたって障害になるのは学校や児童・生徒らの意思ではなく、保護者の根強い反対があるという。一方で埼玉県の中学校では保護者に対する粘り強い説明が功奏、本県でのスキー教室が再開するという成果もあった。

 本県に対する保護者の誤解と偏見を解いて、子どもたちに本県を訪れてもらい、復興の進む現状を見た子どもたちが地域に戻り人々に広める―という好循環をつくることが風評被害やいじめをなくすことにつながるはずだ。

 教育旅行を増やすためには、提供できる教育プログラムの充実が欠かせない。本県の売りである豊かな自然や文化、歴史を生かしたメニューに磨きを掛けなければならない。来年は近代日本の幕開けとなった「戊辰戦争」から150年を迎える。会津若松や白河、二本松の史跡を巡るコースも一案だ。

 震災と原発事故を経験した本県だからこそ提供できる震災の教訓を踏まえた防災に関するメニューも強化したい。

 風評やいじめをなくすためには放射線教育の拡充も必要だ。三春町にある県環境創造センター「コミュタン福島」の活用を全国の学校に働きかけるべきだ。