【10月12日付社説】原発被災者訴訟/「不作為」の責任を痛感せよ

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 東京電力福島第1原発事故について安全対策の不作為が厳しく指摘された。国、東電はその意味を重く受け止めなければならない。

 事故当時、県内59市町村と隣接3県に住んでいた約3800人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の判決が福島地裁であった。

 地裁は津波を予見できたのに対策を怠ったとして国と東電の責任を認定、原告約2900人に総額約5億円を支払うよう命じた。全国で約30ある同種訴訟で3件目の判決で、国の賠償責任を認めたのは3月の前橋地裁に続き2件目。

 安全対策の責任は一義的に事業者にあるが、福島地裁は国の監督責任を重視し、東電を指導しなかった国の責任を明確に示した。国は判決を踏まえて当事者としての意識を持ち、東電とともに本県の復興、再生に責任を全うすべきだ。

 福島地裁は国の責任を認める判断について、政府機関が2002年に発表した地震に関する「長期評価」を根拠とした。長期評価は津波地震の可能性を指摘していたが、国は「科学的知見として確立されていない」として、津波を予見できなかったと主張していた。

 これに対し福島地裁は長期評価について「信頼性は疑われない」と指摘。国、東電が評価に基づき直ちに試算すれば巨大津波は予見できたと判断した。前橋地裁、9月の千葉地裁も同様に判断しており、民事では予見可能との認識が固まりつつあるといえる。

 ただ国の責任については判断が分かれる。福島、前橋両地裁は東電に対策を命じていれば、事故を防ぐことができたと過失を認めた。一方千葉地裁は「対策をしても事故に間に合わない可能性があった」などと責任を認めなかった。

 地裁の判断には津波を予見できた時期が影響したとみられる。津波の予見は福島、前橋両地裁が02年としたが、千葉地裁は06年だった。福島地裁は02年末には東電に指導できたとしており、万一に備え、安全側に立ち対策を行うべき国の対応の甘さを指摘した形だ。

 福島地裁の踏み込んだ判断は国の責任だけではない。賠償では国の中間指針で対象外となっている地域の住民に支払いを命じた。県南と茨城県北部に対象を広げた。

 原告のうち原発事故後も古里にとどまった人が8割を占める。福島地裁は、事故により古里で平穏に暮らす権利を侵害されたとして損害を認め、放射線量を中心に損害額を算出した。現行の賠償で地域ごとに生じた濃淡に配慮した判決は評価できる。東電には判決の趣旨を踏まえ、県民らの個別事情に応じた対応をさらに求めたい。