【11月5日付社説】読書週間/心に響く一冊を見つけよう

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 「もし他所の星から来た生物が、本を読んでいる人間を見たらどう思うだろう」と、芥川賞作家の小川洋子さんは著書「物語の役割」の中で想像する。

 宇宙人は、人間がなぜこんな地味な営みをしているのか不思議に思うかもしれない。しかし小川さんは言う。「その時人間の心がどれほど劇的に揺さぶられているか、それは目に見えません。効果を数字によって測ることも不可能です。だからこそかけがえがないのだ、自分が自分であるための大切な証明になるのだ」と。

 9日まで「読書週間」だ。読書は心を潤し、人生を豊かにしてくれる。お気に入りの一冊を見つけ、本を読む楽しさに浸りたい。

 今年は、文学をめぐる明るい話題が多い。長崎県出身の日系英国人作家カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞し、その作品が一時、書店で品薄になるほどのブームになった。福島市在住の作家佐藤巌太郎さんの単行本デビュー作「会津執権の栄誉」は直木賞候補に名を連ねた。

 こうした話題作は、読書に親しむきっかけになる。普段あまり本を読まない人でも、気軽に手に取ることができるはずだ。

 気掛かりなのは、子どもたちの年齢が上がるにつれて読書離れが進んでいることだ。県教委の昨年度の調査では、1カ月の平均読書数は小学生11・6冊、中学生2・6冊、高校生1・5冊だった。

 中学生は勉強、高校生は部活が忙しいというのが読書をできない理由という。勉強や部活は確かに大切だが、若いときの読書は、学びや人生の土台になる。学校の図書室などで興味や関心のある本を探し、積極的に読んでほしい。

 大人も読書離れが深刻だ。文化庁の2013年度「国語世論調査」では、1カ月に本を1冊も読まない人は半数近くに上った。

 一方で、パソコンやスマートフォンの普及に伴い、インターネットの利用時間は増加傾向にある。総務省の調べでは、15年の1日(平日)のネット利用時間は約90分で、4年間で20分近く増えた。

 ネットは便利だが、活字の向こうに広がる深い世界へと誘ってくれる読書は、また違った楽しさがある。たまにはスマホやパソコンから離れて、本とじっくり向き合う時間をつくってみるのもいい。

 お勧めの作家や、ジャンルの本を特集している図書館や書店も多い。訪れれば、本棚で一期一会の出合いがあるかもしれない。

 ことしの読書週間の標語は「本に恋する季節です!」。感性を刺激してくれる本と巡り合いたい。