【11月7日付社説】座間9遺体事件/SNSに潜む危うさ露わに

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 背筋が凍り付くような悲惨で残虐な事件。露(あら)わになった現代社会の深い闇を見逃してはならない。

 神奈川県座間市にあるアパートの一室から9人の切断遺体が見つかった事件はきのうで発覚から1週間がたった。

 死体遺棄容疑で警視庁に逮捕された男はアパート入居後、2カ月間のうちに全員を殺害したと供述している。9人は男性1人、女性8人とみられ、猟奇的な連続殺人事件に発展する公算が大きい。

 男は会員制交流サイト(SNS)のツイッターなどを使って、自殺願望をほのめかしていた女性らと連絡を取り合い、自宅に誘い出した上で殺害、遺棄を繰り返したとみられている。

 9人はいずれも若者で、うち4人は10代だ。県内の女子高生1人が含まれている可能性がある。将来ある若者の命を粗末に扱う犯行は許し難い。全員の身元特定を急ぐとともに、動機をはじめ数々の謎を徹底的に解明し、再発防止につなげなければならない。

 この事件では、SNSが容疑者と被害者とを結ぶ役割を果たしていた。ツイッターで連絡を取った後、無料通信アプリのカカオトークやLINE(ライン)でやりとりを重ねていたらしい。男は殺害相手の本名を知らなかったという。あぜんとするばかりだ。

 自殺志願者がインターネット上でやりとりをする「自殺サイト」は以前も社会問題となった。警察などが監視を強め、接続業者にサイトの削除を要請するなど対策してきたが、最近は手軽なSNSが取って代わったようだ。

 自殺とネットが結び付く背景には、ネットが持つ秘匿性や非現実性に加えて、誰もが平等に扱ってもらえる特徴があることを専門家は指摘する。自殺願望を書き込むこと自体は規制対象にならず、表現の自由への配慮も要るが、犯罪防止の仕組みづくりが急務だ。家庭でもSNSの利点と危険性について話し合う機会をつくりたい。

 自殺者の減少傾向が続く中、近年は、若い世代の自殺が深刻な問題となっている。厚生労働省のまとめによると、2016年の年齢階級別の死亡原因で、15~39歳は5歳ごとの全ての区分で自殺が最も多かった。

 また、厚労省が昨年秋に行った意識調査では、成人男女の約4人に1人が「本気で自殺したいと考えたことがある」とする一方、相談ダイヤルを知らない人が多数を占めた。若者たちの生きる力を育み、現代の闇に潜む悪意をはねのける社会をつくるために力を合わせなければならない。