【11月10日付社説】コメの全袋検査/新たな段階へ確かな方策を

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 「信頼」と「効率」を最大に得ることができるような新しい検査体制の構築を目指すべきだ。

 東京電力福島第1原発事故を受けて行っている県産米の「全量全袋検査」の在り方に関する検討会が開かれ、県が本年度中に、新たな検査方法への移行に向けた方向性をまとめることを確認した。

 全袋検査を巡っては、検査範囲の縮小やほかの方法への移行など見直しを求める声がある一方で、風評を払(ふっ)拭(しょく)するためには継続すべきとの声もある。消費者や生産者、販売業者らがそれぞれの立場で納得、理解できる新しい体制に転換していくために熟慮を重ねることが必要だ。

 全袋検査は原発事故を受けて県が2012年度に導入した。県内173カ所にある203台の機器で、玄米30キロ入りの袋を1袋ずつ全て検査しているが、15年産米からは全て基準値を下回っている。

 検査の在り方に関する検討は、生産現場からの「検査の手間が大きな負担」「安全なのに全袋検査を続ければ、かえって風評を招きかねない」などの声を受けて始まった。全袋検査には多額の費用が必要で、検査機器の老朽化という課題もある。

 県内外の消費者や生産者らを対象に行った意向調査によると、数年以内に見直すべきとする意見が多数を占めた。しかし現状のまま継続すべきとする意見も消費者で約3割、生産者で約4割あり、軽視できない結果となった。合理的で維持可能な体制づくりに知恵を絞らなければならない。

 調査結果で注目すべきは、県外の消費者の約7割が、検査自体を「全く知らなかった」と答えたことだ。これでは何のために全袋検査を実施しているのか。生産者の努力も気泡に帰す恐れがある。風評はなくさなければならないが、認識を誤ったまま風化が進むようなことがあっては県産米のイメージは向上しない。県産米は安全であることが津々浦々に伝わるよう情報発信の仕方を工夫するよう改めて求めたい。

 全袋検査に代わって、消費者の信頼を得る手段の一つが、コメをはじめとする農産物や農作業の安全性などを管理するGAP(ギャップ、農業生産工程管理)の認証取得だ。国際認証や日本版認証に加えて、今夏には県GAPもスタートし、より多くの生産者が取り組みやすくなった。

 検査方法を見直す傍ら、コメをはじめとする県産農産物に対する信頼度を向上させるための努力を県や農業団体、生産者が手を携えてしていくことが重要だ。