【1月11日付社説】カヌー薬物混入/技も心も範たる五輪選手に

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 2020年東京五輪に向け、すべてのスポーツ選手は技術だけではなく、フェアプレーの精神も磨いていかなければならない。

 日本カヌー連盟が、昨年9月のスプリント日本選手権で、鈴木康大(やすひろ)選手(二本松市)がライバル選手の飲み物に禁止薬物を混入させ、それを飲んだ選手がドーピング検査で陽性になったと発表した。他者からの薬物混入によるドーピング違反の発覚は国内で初めてだ。

 鈴木選手は、昨夏の世界選手権にも出場している。国内トップクラスの選手で、カヌーに取り組む子どもたちの憧れであり、手本になるべき存在だ。その選手が他者を陥れようとする行為に走ったことは残念でならない。

 ドーピングは、選手が自らの競技力を高めるため、筋肉を増やす薬物などを使う場合が多い。禁止薬物が含まれることを知らずに使用した場合でも違反が問われるほど、厳しく禁じられている。

 鈴木選手は、東京五輪の出場を争うライバル選手の台頭に脅威を感じていたという。「五輪に出場したい」という焦りから、薬物混入などの妨害行為を行っていたとみられる。

 重圧の中で思うように成績が伸びない状況が続けば、精神的に追い込まれる選手もいるだろう。だからといって、今回のようなことが許されるはずがない。

 競技団体は今後、同様のケースが起きないよう、講習などを通して選手に規律を守る倫理観の徹底を図っていく必要がある。

 また、アテネ五輪ハンマー投げ金メダリストの室伏広治さんは「アスリートが口にするものは、自分で責任を持つということだ」と指摘する。競技団体は、世界での活躍を目指す選手に対して、わずかでも目を離したり、他人から渡されたりした飲み物は飲まないように自己管理を身に付けさせることも求められる。

 日本は海外に比べてドーピングの違反件数が極めて少ない。そのため競技団体、選手はドーピングに対する危機感が薄かった。

 しかし今回の問題を受け、カヌー連盟は今後、ドリンクの保管所を設けて監視を強化する考えだ。こうした対策をカヌー以外の各競技団体にも広げることで、選手らに違反行為をさせない環境を整えるべきだ。

 東京五輪・パラリンピックは2年後に迫っている。「復興五輪」を掲げ、本県でも野球・ソフトボール競技が行われる。世界のトップアスリートがルールを守り、正々堂々と競い合うことでクリーンな五輪を実現してほしい。