【7月6日付社説】阿武隈急行30年/地域へと活気も運ぶ鉄道に

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 鉄道が地域を活性化し、それにより鉄道の利用者も増えるような好循環をつくり出したい。

 福島市と宮城県槻木を結ぶ第三セクター鉄道「阿武隈急行」(本社・伊達市)が全線開業から30年を迎えた。

 同社は1988年7月、廃線が決まっていた国鉄丸森線を引き継ぎ、福島、宮城両県と沿線市町、福島交通が会社を設立して開業した。現在は株式の8割を両県と沿線などの18市町が持っている。

 延長は54・9キロで、うち本県側は26・8キロ(15駅)、宮城県側は28・1キロ(9駅)。沿線住民が通勤・通学などに利用する生活の足であるとともに、果樹地帯や阿武隈川沿いなど四季折々の景色を楽しむことができる観光路線としての役割を担っている。

 ただ、近年は利用者の減少に直面している。昨年度の1日当たりの乗客数は約6800人でピークの95年に比べ約2100人も減少した。これに伴い、累積赤字は10億円以上に膨らみ、県や沿線市町の補助金がなくては経営が立ち行かないのが実情だ。収益の改善を急ぎ、税金で支えられる構造からの脱却を図らなければならない。

 それにはまず、利用者を増やすことが肝心だ。少子化で高校生の定期利用が減っている一方で、通勤定期の利用者がわずかながら増加傾向がみられる。環境にやさしく交通混雑の解消にもつながる電車通勤の利点を企業にPRし、通勤客の利用を促したい。

 観光客を呼び込む工夫も凝らしたい。例えば、沿線で「SNS映え」するような絶景ポイントを巡るツアーを企画してはどうだろうか。一部の駅で行っているレンタサイクルの無料貸し出しの拡大など利便性の向上も自治体と協力しながら進めていくべきだ。

 同社は18両9編成の車両を所有するが、開業から30年を経て、老朽化が進んでいる。このままでは更新時期を同時に迎えるため、本年度から前倒しして更新を始めることにした。本年度は、国や沿線自治体からの支援を受けて2両1編成を更新する。

 同社は来年度以降も国や自治体による支援を要望している。安全な運行を続けるためには車両更新が必要だが、総額で約40億円にも上る更新費は自治体にとっても大きな負担となる。公費の負担を受ける以上、幅広い理解を得る必要がある。説明を尽くしてほしい。

 県や沿線自治体などは4月、同線の安定運営に向けて協議会を設置させた。「あぶ急」と沿線地域の双方が共栄するような実効性ある方策を練り上げてもらいたい。