【7月7日付社説】松本死刑囚ら刑執行/検証重ね教訓生かす努力を

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 平成の事件史に深く刻み込まれるこの節目をどう受け止め、これから進む風化と向き合うか。検証を重ねながら教訓を生かしていく努力を怠ってはならない。

 法務省は、地下鉄、松本サリン事件などオウム真理教による一連の犯行を引き起こしたとして、殺人などの罪に問われ、死刑が確定した教団元代表、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ら7人の刑を執行した。一連の事件では13人の元教団幹部の死刑が確定しているが執行は初めて。異例の7人同時執行はオウム事件の重大さを物語る。

 1995年5月の逮捕から23年。犯罪史上、類を見ない数々の凄惨(せいさん)な事件を首謀した教団トップは一審途中から沈黙し、事件の詳細を語ることがないままの執行となった。松本死刑囚が宗教の名の下に高学歴の若者を引き込み、暴走した経緯は依然として未解明な部分が多い。こうした事件が起こらないようにするためにはどうしたらいいか。社会は今後も模索を続けなければならない。

 確定判決によると、松本死刑囚は他の教団幹部らと共謀。坂本堤弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などを起こした。公証役場事務長監禁致死事件なども含め13事件に関与し、判決で認定された死者は計27人。起訴後の死亡者などを含めた犠牲者は29人に上り、国は6500人以上の被害者を確認している。

 地下鉄サリン事件は先進国で初めて生物化学兵器が使われた無差別テロとなった。被害者と遺族の苦痛は現在も続いている。回復の見込みが立たず、寝たきりになった人もいる。毎年、事件が起きた時期を迎えると体調を崩したり、不安に襲われる人もいる。無差別テロを繰り返させないという強い決意を改めて共有したい。

 教団は「アレフ」など三つの団体に分かれ活動を続けている。一連の事件を知らない世代を入信させる一方、被害者や遺族への賠償は進んでいない。3団体とも団体規制法に基づく観察処分の対象となっている。松本死刑囚は今も一部信者から信仰を集めているとされ、死刑により神格化が進む可能性がある。公安当局は不測の事態に備えるとともに、長期的に注視していくことが求められる。

 一連の事件は未曽有の凶行であり、遺族や被害者、多くの国民から厳しい視線が向けられたのは間違いない。ただ執行を巡っては議論もあった。内閣府の世論調査で死刑容認は8割を占めるが、裁判員裁判で死刑と向き合う市民も増えている。制度について議論を深め合うことに意味はあろう。