【7月18日付社説】高校生富士登山/一歩一歩進めば夢はかなう

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 「あきらめず一歩一歩登っていけば夢はかなえられる」。2016年10月に亡くなった三春町出身の登山家、田部井淳子さんの言葉をかみしめる季節が巡ってきた。

 田部井さんの提唱で12年からスタートした復興支援プロジェクト「東北の高校生の富士登山」が、今年も24~26日の日程で行われる。7回目となる今回の登山には、本県を中心とした98人が参加し、日本一の頂を目指す。

 同プロジェクトには、東北の将来を担う高校生たちに、富士登山を通じて物事に挑戦することの大切さを体験してほしい―という田部井さんの思いが込められている。田部井さんは病に倒れる直前まで富士登山に同行し、言葉と行動でその思いを直接伝えていた。

 これまでの参加者は479人。富士登山の経験を励みに、それぞれの夢を目指して奮闘する人材として成長している。今年の参加者にも、富士山への挑戦が自分への自信につながり、将来の困難を乗り越える糧とすることができるように、体調を万全に整えて本番に臨んでほしい。

 今回の登山からは、主催が一般社団法人「田部井淳子基金」となる。法人の代表理事で、田部井さんの長男進也さんは「母は高校生千人の富士登山を目指していた。幅広い支援を受け、息の長い活動として続けていくために法人を設立した」と、その理由を語る。

 富士登山の参加者数は、今年の参加者を合わせると目標とする千人の半数を超える見通しだ。登山で例えれば、5合目まで登ってきたということになる。

 多くの友人たちと協力して登頂を目指した経験は、参加者にとって何物にも代え難い人生の宝物になる。これからも、参加した高校生たちが自分自身の夢や目標など新しい発見ができるよう、登山プログラムをより充実させていってほしい。それが、田部井さんの思いを後世に永く語り継いでいくことにもつながるはずだ。

 この春には、田部井さんが1975年に女性で初めてエベレストに登頂した時の装備や手記、手紙などの遺品が、三春町に寄贈された。現在はその一部が、同町の歴史民俗資料館に展示されている。

 田部井さんがエベレストに登頂した時代は、いまのような最先端技術を駆使した登山用具はなかった。遺品を目の当たりにすると、強い意志で目的を成し遂げた田部井さんの偉業が実感できる。町には展示を通じて、「いつも明るく、前向きに」という田部井さんからのメッセージを多くの人に伝えていってもらいたい。