【7月25日付社説】自殺防止対策/「命の門番」の輪広げ充実を

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 身近な人のSOSに気付き、支える取り組みを広げて、自ら命を絶つ悲劇をなくしたい。

 自殺予防の担い手である「ゲートキーパー」の活動充実を後押しする「県ゲートキーパー連携センター」が発足した。自殺防止に取り組んでいる福島いのちの電話や、NPO法人福島れんげの会の有志らがつくった。

 ゲートキーパーは、自分の周りで悩んでいる人の話を聞いたり、専門機関につなげたりして自殺を防ぐ役割を担っており、「命の門番」とも呼ばれる。公的な資格ではなく、自治体や民間団体などが主催する養成講習で活動の仕方などを学び、生活の中で役立てる。

 県によると、昨年度は県と中核市の郡山、いわき両市が開いた養成講習を受講した人は延べ約2500人だった。

 ただ、中には一度講習を受けただけでゲートキーパーとして活動することに不安を持つ人もいる。連携センターは、そうした人にさらに詳しい研修を受けてもらったり、ゲートキーパー同士の情報交換の機会を設けたりするのが狙いだ。事業を通して、地域で活躍することができるゲートキーパーを増やしてもらいたい。

 また、福島いのちの電話は9月から、ゲートキーパー養成講習への講師派遣も始める。これまで自治体が行ってきた講習の受講者は民生委員や理美容師、飲食店関係者などが多かったが、今後は町内会や大学のサークルなど幅広い団体に受講してもらいたい考えだ。

 地域や職場など、さまざまな場で身近な人を支える体制を整えることは、安心して暮らせる環境づくりにつながる。より多くの人々にゲートキーパーへの関心を高めてもらい、理解と協力を広く求めていくことが大切だ。

 厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、昨年1年間に自殺した県民は376人で、前年比28人の増加だった。人口10万人当たりの自殺率は20.1人で全国ワースト5位となっている。自殺者数は近年減少する傾向にあったが、昨年は増加に転じたこともあり、深刻な状況が続いている。

 現状の改善には、地域の実情を反映したきめ細かな対策が必要となる。国は全市町村に対して自殺対策行動計画の策定を求めているが、県内で昨年度までに策定したのは二本松、本宮、西郷、川内の4市村にとどまっている。

 各市町村は、それぞれの地域の福祉団体や教育機関などと連携した実効性のある自殺対策や、計画的なゲートキーパーの養成を積極的に進めていくことが重要だ。