【7月27日付社説】診療所の後継/地域医療担う人材の確保を

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 県民の健康な暮らしを守るためには、地域医療を支えている診療所を継承していく人材の確保を急がなければならない。

 県は本年度、後継者のいない県内の民間診療所と、診療所を引き継ぐ形での開業を希望する県外の医師を結び付ける「医業承継支援事業」を展開する。

 支援事業では、県医師会に人材バンクを設置して診療所と開業志望の医師を登録。双方の意向を調整することで、県外の医師が診療所を継承する事例の増加を目指す。一人でも多くの人材を地域医療の担い手として迎え入れたい。

 県が民間診療所の後継者不足を解消するための事業を始めた背景には、診療所を開業している医師の高齢化の問題がある。厚生労働省の統計によれば、県内の診療所医師に占める60歳以上の割合は約3割で、全国平均の約2割を上回っているのが現状だ。

 診療所は、入院患者を受け入れる病床数が19床以下の医療機関を指す。県内の診療所数は2016年10月現在で1370施設。10年と比較すると87施設減少しており、廃業が新規開業よりも多いペースで進んでいることが分かる。高齢の医師が、家族や親族ら近親者に引き継ぐことができないまま引退するケースが増えれば、診療所の減少に拍車がかかり、地域によっては医療体制に空白を生じさせる可能性もある。

 今回の事業を契機に、県と医師会が連携して診療所から聞き取りを行い、医師の高齢化と後継者を巡る課題が医療体制に与える影響を把握することが欠かせない。

 診療所を譲ることを考えている医師に対して、第三者に診療所を引き継ぐための手続きを分かりやすく説明するためのセミナーなどを開催する必要もあるだろう。

 県は、人材バンクに登録を呼び掛ける対象として、県外の医療機関に勤務してUターンを考えている本県出身者、地方暮らしや地域医療に関心を持っている医師らを想定している。

 支援事業の成否は、県外からどれだけ医師を呼び込めるかにかかっている。医療の専門誌に広告を出すなどの手法に加え、地縁や人脈を活用し、県内での勤務を考えている医師に確実に情報を届けるような取り組みが求められる。

 開業医が長い年月をかけて担ってきた診療所の機能が失われることは、市町村にとっても大きな社会的な損失になる。

 後継者として開業を希望する医師を支援するための枠組みを、県と市町村が連携して構築していくことも重要だ。