【8月18日付社説】サン・チャイルド/賛否を福島の未来への糧に

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 福島市が今月3日、市の教育文化施設「こむこむ」の玄関前に設置した現代アート作品を巡って、賛否両論が巻き起こっている。

 作品は、現代美術家のヤノベケンジさんが制作した子どもの立像「サン・チャイルド」。寄贈を受けて展示した。高さ6メートル余りの大作で、防護服姿で脱いだヘルメットを手にし、空間線量計を模した胸のカウンターには「000」と表示されている。立像のそばにある説明書きによると「原子力災害がない世界」を象徴し、復興へ立ち上がる人々に夢と希望を発信する意図があったという。

 市によると、作品に対する意見は立像の設置直後から寄せられている。「福島の明るい将来が表現されている」と肯定的な意見がある一方、「福島は防護服を着るような状況になく風評被害を助長する」「自然放射線が存在し、線量ゼロはありえない」と批判する意見が投稿サイトなどで相次ぎ、撤去を求める動きもあった。

 立像が芸術作品である以上、見る人によって、解釈の仕方が異なるのは当然だ。賛否両論があっていい。ただ、想像の産物である芸術作品に対して、科学的根拠を求めるのは意味がなく、撤去を迫るのは妥当ではないだろう。

 ヤノベさんが、立像を制作したのは2011年。東日本大震災と原発事故が起きた年だ。ヤノベさんは制作意図について「人々を勇気づけるような作品を作りたいと思った」とホームページにつづっている。完成した立像は、12年の福島現代美術ビエンナーレで福島空港に展示されるなどして県民を励ました。7年余前に制作した作者の気持ちに一度、思いをはせてみてもいいのではないか。

 一方で、防護服姿で線量計を身に付けている立像について風評被害を心配する意見があるのも分からないわけではない。市は立像について「希望の象徴」として展示したとしている。木幡浩市長は「原子力災害の真実を心に訴える力をもって語り継ぎ、発信するのは、福島にしかできない」とコメントしている。

 市は、立像を設置した理由や作品の内容について詳しく丁寧に説明する必要がある。今回の反響は、福島市の復興が進む現状や放射線に対する正しい知識を、国内外の人たちに理解してもらうチャンスと捉えて、さらなる情報発信に努めてもらいたい。

 「今回の議論が、福島への関心を高め、深めること、復興への応援につながることを願っている」。脳科学者の茂木健一郎さんはブログで本県にエールを送っている。