【5月26日付社説】業務用米の生産/家庭用と両輪で稲作振興を

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 本県農業の根幹となっている稲作の持続可能性を確保していくための大きな柱として育てたい。

 県は本年度、業務用米を生産する農家への支援策に乗り出す。業務用に適しているとされる「ちほみのり」などの多収性品種を実証栽培し、本県の気候風土に合った栽培方法の確立と普及に努める。

 国などの調査によると、国内のコメの消費のうち約3割が、弁当やおにぎりなどの「中食」とレストランなどの「外食」で占められている。中食・外食で使われる業務用米の需要は、コメ全体の消費量が減る中でも堅調に伸びると見込まれており、他産地では多収性品種の導入を進める動きがある。

 本県農業の課題は、東京電力福島第1原発事故の風評からの脱却だ。他産地との競合にも対応していかなければならない。県には、主力品種の振興とともに、業務用米など新しい市場の開拓に取り組み、本県の農業再生を着実に前に進めるよう求めたい。

 業務用米は、米穀店やスーパーなどに流通する家庭用に比べると取引価格は安い。しかし、業者と農家の間の契約は、数量を確保する観点から複数年や価格固定制となる傾向にある。農家には、米価変動や売り先が見つからないなどの懸念から解放され、安定収入を得ることができるのが利点だ。

 課題は、コシヒカリなど家庭用として人気がある品種を栽培した時に得られる収入との格差だ。単価の差を補うためには、多収性品種の的確な栽培で多くの収量を実現することで、収入を確保していく必要がある。県は、業務用米の生産に取り組もうとする農家に対し、「低コスト多収穫」の栽培方法を丁寧に指導してほしい。

 県が、業務用米として導入を目指す品種は「ちほみのり」「ほしじるし」「ゆみあずさ」の3種類を検討している。本県で栽培されている他品種と収穫の時期を比べると、「ちほみのり」と「ゆみあずさ」は早く、「ほしじるし」は遅いことが特徴になっている。

 農家の高齢化が進み、将来は水田が担い手や農業法人に集約されていくことが想定される。その際に単一品種の生産を続けていれば、短い収穫期に全ての刈り取りを済ませなければならず経営規模に限界が生じる。コシヒカリなどと多収性品種を併せて生産すれば、収穫期が分散するため、同じ労力でより大きな面積に対応することができる。

 人口減少や担い手不足の中で県内の農地を維持する観点からも、生産の多様化による営農基盤の強化は欠かせない。