胸打たれた「特別な夏」 高校野球福島大会総評
東日本大震災、東京電力福島第1原発事故。その影響による球場の放射線量測定をはじめ、簡素化した開会式、連合チーム出場など異例ずくめの大会運営となった第93回全国高校野球選手権福島大会。聖光学院が大会史上初の5連覇を成し遂げ、熱戦の幕を閉じた。
聖光学院は、例年にも増して圧倒した戦いぶりが目立った。全6試合で47得点。コールド試合は2〜4回戦までの連続3試合。1試合平均得点は約7.8点と他チームを最後まで寄せ付けなかった。
その中でも、須賀川の躍進は目を見張るものがあった。41年ぶりに進出した決勝で敗れたものの、6試合のうち1点差ゲームは4試合。エース須藤渉(3年)を中心に接戦をものにした勝ち上がりは見事だった。
そして、震災から約4カ月過ぎての今大会。原発事故の影響を受け続ける本県にとっては文字通り「特別な夏」だった。相双地区の高校では、避難し散り散りとなった部員。自宅もろとも野球道具を流された選手。原発から20キロ圏内の警戒区域に指定された高校は戻ることもできず、練習はおろかチーム編成もままならない状態となった。
著しい部員不足に陥った双葉翔陽、富岡、相馬農の連合チーム「相双連合」の出場が認められ、1回戦で敗れたものの、困難をはねのけて白球を追う球児の姿は胸を打った。相双連合をはじめ、母校を離れて学ぶサテライト実施校で出場したのは5チーム。満足な練習ができなかったにもかかわらず、4チームは初戦を突破。その中でも小高工は2年連続で準決勝に進み、初の決勝進出まであと一歩まで迫った。県内87チーム(89校)の頂点に立った聖光学院。特別な夏に挑んだ球児の思いを背負った戦いが待つ甲子園での活躍に期待したい。
(2011年7月29日 福島民友・高校野球ニュース)
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