祭典・リオ五輪...期待と不安 現地ルポ、歓迎ムードも厳重な警備
「WELCOME TO HELL」(地獄へようこそ)。五輪開幕まで約1カ月に迫った7月上旬、テレビ越しに衝撃的な光景が飛び込んできた。リオデジャネイロの国際空港で現地の警察官や消防士が「給料が未払いのため、リオの安全は保障できない」と英語の垂れ幕を掲げていた。原油価格の下落による財政悪化で公務員の給与が滞っている状況に対する抗議の一環だった。
それから1カ月、恐る恐る国際空港に降り立った。日本選手団本隊の到着と重なっただけに、空港は同じ場所とは思えないほど歓迎ムードに包まれていた。タクシーに乗り、幹線道路を通ってセントロ(旧市街地)に向かう。南米らしい古風な建物が並び、情緒あふれる風景に目を奪われた。
だが、旧市街地に入ると風景は一変。道路沿いの壁には所狭しとスプレーで絵や文字が描かれていた。高層ビルの周辺に「ファベーラ」と呼ばれる貧民街が点在、治安は市内で最悪レベルだ。現地の住民から「なるべく外を出歩かない方がいい」と説明された。日本大使館は人通りが少なくなる平日夜や土日の外出自粛を呼び掛けている。地区内は至る所で警察や軍関係者が銃を肩に掛けて不審者に目を光らせており、物々しい雰囲気だ。
その後、選手村やメインプレスセンターが集中する西部のバーラ地区を訪れた。比較的治安が落ち着いているというものの、交通違反の取り締まりなのか昼夜を問わずサイレン音が響く。九つの競技施設が並ぶ五輪公園は金網で囲まれ、入場者には厳重な手荷物検査が課される。
市内の幹線道路では交通渋滞も目立つ。車道には五輪関係の車両しか通行できない専用レーンが設置されており、関係者はバスなどで渋滞に巻き込まれず移動できることには驚いた。
治安悪化、ジカ熱、直前にはロシア選手の参加問題も浮上。さまざまな問題を抱え、期待と不安が入り交じりながら史上最大のスポーツの祭典が幕を開ける。
それでも世界中のアスリートたちは国を背負い、4年に1度の大舞台に照準を合わせて準備を進めてきた。カーニバルで知られるリオでの五輪が、熱気と興奮に包まれた素晴らしい大会となることを願う。
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