自転車ケイリン・渡辺一成「支援へ恩返し」 悲願のメダル狙う

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 「復興のために全身全霊で競技したい」。自転車男子ケイリンに出場する渡辺一成(33)=日本競輪選手会福島支部、小高工高卒=は古里の誇りを胸に、自身3度目の五輪で悲願のメダル獲得を狙う。

 双葉町出身の渡辺。原発事故から5年が経過した今なお、多くの町民が避難生活を余儀なくされている。それでも周囲からはいつも温かい応援を受け、心の励みになっているという。

 競技を始めたのは高校1年の冬ごろ。陸上部に所属していて「足が速い」と評判になった。父善行さん(67)の後押しもあり、自転車への転向を決意。父のバイクに先導されながら、松林に囲まれた美しい浜街道で地道に競技の基礎を築いた。

 学法石川高や白河実高など県南に全国的な名門校が集中しており、渡辺が高校生活を送る浜通りに自転車の部活動はなかった。数々のトップ選手を輩出してきた「自転車王国」の本県にあって"異色ルート"で生まれた競輪選手。孤独の中で鍛錬を重ね、自ら道を切り開いてきた。

 震災で実家は損壊、両親は神奈川県大和市の公営住宅に避難した。自身も競技施設が充実した静岡県伊豆市に仮住まいを設けた。将来的に拠点を戻そうと実家近くに購入した土地は中間貯蔵施設の予定地となり手放した。苦渋の選択だった。

 それでも古里への思いが消えたことは一度もない。「メダルを取ることが支えてくれた人への最大の恩返しになる」。これまでの競技人生で培った全ての力を集大成の舞台にぶつける。